外交ジャーナリストの手嶋龍一さんが、令和に読み継ぎたい名著3冊を紹介します。
日韓が領有を争う竹島の上空を中ロの両軍機が雁行して飛んだ――。東アジアの情勢は年ごとに烈しさを増し、令和の日本を取り巻く地政学は姿を変えつつある。明治の日本も列強の脅威に晒されながら、国づくりを強いられた。熊本城下に生まれた陸軍士官、石光真清は、忍び寄る帝政ロシアの影を敏感に感じ取り、将来の栄達を捨て「露探」となり、アムール河畔に身を潜めた。『城下の人』『曠野の花』『望郷の歌』『誰のために』の4部作は、大陸を舞台にした「密偵秘録」である。生き残りを賭ける国家、その最後の砦は、若者の志を措いて他にないことをいまに伝える書だ。
『戦艦大和ノ最期』は、学徒出身の士官、吉田満が重油に塗れた海から生還し、ほぼ1日にして文語体で書きあげた「大和」の蓋棺録だ。
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source : 文藝春秋 2020年1月号