コンサル経営、1億円超の役員報酬……出身官庁に縋る「天下り」の時代は終わった
(※一覧リストは文末に掲載しています)
東京メトロ・六本木一丁目駅に直結するアークヒルズサウスタワーのオフィス。部屋の主は第一次安倍晋三政権で首相秘書官を務め、内閣情報調査室トップの内閣情報官や国家安全保障局長を歴任した北村滋氏(昭和55年、警察庁入庁)だ。壁に飾られた高市早苗首相、露木康浩内閣官房副長官(61年、同)との3ショット写真を背に、かつて「官邸のアイヒマン」と呼ばれた男はこう切り出した。
「最初は約2平米のシェアオフィスから始めたので、会議室やコピー機を使うのも順番待ちでした。起業のマニュアル本を読んで、法人登記やドメイン取得も自分でやりましたし、メガバンクの法人口座開設の審査でリモート面接を受けたことも。名刺は親交のある隈研吾さんが格好良くデザインしてくれました。官僚時代は文字だけの名刺でしたから、当初は少し抵抗感がありましたよ」
退官翌月の2021年8月に立ち上げたのが、経済安全保障のコンサル会社「北村エコノミックセキュリティ」だ。同社シニアダイレクターには、菅直人政権の首相秘書官・前田哲元防衛政策局長(58年、旧防衛庁)や、国家安全保障局の初代経済班長を務めた藤井敏彦元内閣審議官(62年、旧通産省)ら錚々たる顔触れが並ぶ。現在のオフィスに移ったのは設立から3年後の一昨年12月。オブライエン元米大統領補佐官が営むコンサル会社と提携し、国内外の企業と契約を結び事業を拡大してきた。
「守秘義務があるので詳細は明かせませんが、契約先は金融機関やコンサル、スタートアップ、地方の中小企業など多種多様。海外が4割で、国内が6割です」
売上高については、「町のお好み焼き屋さんにも敵わないくらい」と謙遜するが、民間調査会社のレポートによれば、2025年6月期は約4億3000万円にのぼる。

一方で、フィリピンとの合弁会社「パシフィックセキュリティカウンシル」を経営するほか、家族とともに資産管理会社「ブルーライン企画」も設立。ほかにも、読売調査研究機構理事長や日本テレビの社外監査役なども務めている。
官邸官僚たちの「第二の人生」について尋ねると、こう断言した。
「退官後も役所に縋って生きていくのはもう古い。もはや天下りの時代ではないのです」――。
官邸の守護神が営むコンサル
平成初期に社会問題化したキャリア官僚の天下りが転機を迎えたのは2007年。第一次安倍政権で国家公務員法が改正され、出身官庁が再就職の斡旋を行うことが禁止された。結果、独立行政法人や関連団体への天下りは鳴りを潜めたものの、その後も様々な問題が噴出した。2017年には文科省が大学などへ組織的に再就職を斡旋したことが発覚。当時の前川喜平次官(54年、旧文部省)ら40名超の幹部らが処分を受けた。2023年には、国交省の本田勝元次官(51年、旧運輸省)らOBが、同省が多くの許認可権を持つ空港施設株式会社のトップ人事に介入したことも報じられている。
エリート官僚たちの第二の人生は現在、どうなっているのか。財務省の局長経験者に聞くと、北村氏の意見に頷き、「いまは“サバイバル”の時代だ」と語った。
「昔のように、早くから次官候補を1人に絞り、それ以外の職員に早期退職を迫ることはなくなりました。結果として、定年まで勤める職員が増えている。一方で、省庁の斡旋は禁じられていますから、独自の人脈がなければ再就職できない。伝手がないまま定年を迎え、年金収入だけの元官僚も多い一方で、顧問や社外取締役を数多く務め、現役時代の数倍の年収を稼ぐ人もいます」
この局長経験者は最近のトレンドとして、北村氏のように個人会社を立ち上げる官僚が増えたことを挙げる。実際、今回調べてみると、各省に広がりを見せていることが分かった。北村氏の後輩にあたる中村格(いたる)元警察庁長官(61年、警察庁)は2022年、安倍元首相銃撃事件の責任を取る形で長官を辞任したが、翌年には「オフィス中村」を設立。コンプライアンスについてのコンサル業務を行う。ほかにも、大島一博元厚労次官(62年、旧厚生省)の「社会政策研究所」や、末松広行元農水次官(58年、農水省)の「次世代産業研究所」、西正典元防衛次官(53年、旧防衛庁)の「西事務所」などが確認できる。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
初回登録は初月300円・1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
電子版+雑誌プラン
18,000円一括払い・1年更新
1,500円/月
※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2026年5月号

