昨今は、話題性のために星をつけたり落としたりする

2025年10月、パリのフランス料理店「ランブロワジー」のシェフに就任しました。日本では木村拓哉さん主演のドラマ「グランメゾン東京」で憧れの名店として名前を挙げられたので、聞き覚えのあるかたもいらっしゃるかもしれません。
お店はパリ最古の広場であるヴォージュ広場に面し、宮廷の貴族たちの住んでいた邸宅が建ち並ぶ一角にあります。かつてルイ13世が過ごしたという、文化的にも価値のある建造物です。1988年からミシュランの三つ星を維持し、世界最高峰のフレンチと評されてきました。
そのような歴史的な名店のシェフに抜擢され、周囲は心配して「大丈夫?」と声をかけてくれます。はたから見ると重責かもしれませんが、じつは正直に言って、私自身にはプレッシャーがありません。そもそも昨今のミシュランは話題性を求めて星をつけたり落としたりする。確かに影響力はありますが、そう気にしない若いシェフも増えてきました。
今年3月にミシュランが新たな星を発表し、ランブロワジーは星二つになりました。でも、私は星はむしろゼロになってもかまわないと思っていたのです。経営するオーナーは「なんてことを」と言うと思いますが(笑)、三つ星はお店を引退した名シェフ、ベルナール・パコーさんが築き上げたものです。引き継いだのは星ではなくランブロワジーというお店そのものですし、私が引き継いでから5カ月で二つ星のスタートを切ることができ、大変嬉しく思っております。これまでいくつかの三つ星レストランで実績を積んできました。たとえゼロになっても、星を取り戻せる自信があります。
アポなしで直談判
両親は栃木で和食料理店を営んでいました。長男である私は、幼いときから料理人になってお店を継ぐと、自然にそう思っていました。料理は小学生のころから見よう見まねで作って得意でしたし、高校は勉強しながら料理も学べる調理科に入りました。自分の進むべき道は料理であると決めていた節があります。
和食ではなくフランス料理を目指したきっかけは、15歳の夏休みのときに家族でヨーロッパを旅行したことです。高校時代にはパリへの1カ月間の研修旅行もありました。そのときヨーロッパ、なかでもフランスの技術がこんなにも高く、日本と違うことを目の当たりにして驚愕したのです。そこで日本を出て学ぼうと、2004年に高校を卒業するとすぐにフランスへ渡りました。両親は不安だったかもしれませんが、一度夢中になってしまったら突き進む私の性分を承知しています。「行きたいなら、行ってらっしゃい」と快く送り出してくれました。
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