亡くなる前日まで自分でトイレに行くには
「歩けるうちは人は死なない」のキャッチフレーズで13万部を突破した『棺桶まで歩こう』(幻冬舎新書)の著者・萬田緑平氏は群馬県前橋市でがん患者専門の緩和ケア診療所を営んでいる。
青栁幸利氏は、同じ群馬県の中之条町で2000年から65歳以上の全住民(約5000人)を対象に調査を続け、「1日8000歩/速歩き20分」が多くの病気予防に有効との“中之条メソッド”を見出したことで知られる。近著は『すべての病気が防げる長生き歩き』(エクスナレッジ)。
寿命や健康と、歩くことの関係を見つめてきた両氏が、どうすれば死の直前まで歩けるのかを語り合った。

青栁 萬田先生の本に「人の寿命は歩幅と背筋でわかる」と書かれていて、とても共感しました。年を取ると歩幅が狭くなって、歩く速度が遅くなる。すると、途端に老化のスピードが上がることが、さまざまな研究から明らかになっています。
萬田 高齢者は、スタスタと歩ける人は10年以上生きられる。手を使わずに立ち上がれる人は1年以上で、立ち上がれない人は半年以内。歩幅が狭くてチョコチョコとしか歩けない人は数カ月、歩けない人は1カ月以内というところですね。
青栁 私も加齢による歩行の変化について調査したことがあります。加齢で背中が曲がって猫背になると、重心が前に移動するので、それを戻そうとして腰が引けて膝が曲がる。さらにバランスを取るために左右の足が開きがちになり、歩幅が狭まって歩く速度が遅くなる。1メートル進むのに1秒以上かかると、青信号で横断歩道を渡りきれなくなります。そうすると外出を控えるようになってしまいます。
興味深いのは、歩幅(歩行速度)の変化は加齢だけでなく、ライフイベントの影響も大きいことです。たとえば退職や配偶者との死別ですね。女性よりも男性のほうが圧倒的に影響を強く受けます。

萬田 女性のほうがタフで長生きするわけですね(笑)。
僕は、歩幅を広くするために、まずはゆっくりと歩いてもらいます。体重を骨盤と股関節にしっかり乗せて片足立ちができなければ、大股で歩けませんから。
青栁 背筋をピンと伸ばして、歩幅を握り拳一個分広げるように意識してみてくださいと私は言っています。すると、歩くピッチも自然と上がってくるんです。
萬田 歩くためには何が重要なのか、僕は「体幹の持久力」だと思います。茶道、華道、書道など「道」の師範は、背筋を伸ばして長時間座っていられますし、それで「疲れた」なんて言いません。体幹の持久力を鍛えるには、背もたれのない椅子で背筋を伸ばして長時間座ること。持久力がつくまで時間がかかりますが、そのぶん落ちるのはゆっくりです。
腰が90度くらい曲がっているおばあちゃんを見かけますよね。実はアレ、治るんです。高齢になっても筋力はつけられるから、意識して背筋を伸ばすといいですよと3人の女性に教えてあげたら、1年ほどかかりましたが全員ピシッと治った。10歳くらい若返ったように見えて、感謝されました。
青栁 背筋を伸ばせると、長く歩けるようになりますね。
股関節の可動域を保つ
萬田 自分の経験からわかったのですが、人が歩けなくなる一番の原因は、股関節の可動域が狭くなってくるからだと思います。7年前まで群馬県リーグでサッカーをしていたんですが、股関節が痛くなってやめてしまった。そのうち、ゴルフもスキーもできなくなって、今はかろうじて自転車には乗っています。医師からは何度も手術を勧められましたけどね。

青栁 医師からは人工関節にするように言われたのですか。
萬田 はい。医師は骨ばかり見て、誰もどこが痛いかあまり興味がない。でも、悪いのは骨じゃなくて、靭帯の固さから股関節の可動域が狭くなっていることだと気付きました。それからはストレッチなどをして、関節が動くようになり痛みが引いてきて、ようやく走れるようにもなってきました。
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