自分軸の終活

第18回

内館 牧子 脚本家
ライフ 読書 ライフスタイル

 このところ、雑誌などメディアのインタビューで、必ず聞かれる。

「内館さんは今、人生でやり残したことって何ですか」

 これには理由があって、昨今、世をあげて「終活」が言われる。終活の準備をしていない人は、焦らされるほどだ。

 しかし、多くは「他人軸」の終活だろう。財産分与について、役所や銀行の雑多な諸々の手続きなどを、遺族にわかりやすく書いておく。また、病気などで意思の疎通ができなくなった時、胃ろうや咽喉を切開する人工呼吸器、その他の延命治療などの諾否を書いておく。

 これらは、どれほど遺族を楽にするか。だが、これは遺族が困らないようにと、いわば他人軸の終活である。シャレコウベになる本人のための、つまり「自分軸」の終活ではない。

 自分のための終活をも、もっと考えてもいいはずだ。思い残すことなく、「ああ、いい人生だった」と旅立つには、本人を満たす終活が必要ではないか。

 それには、どうしたらいいのか。そして気づいた。生きているうちに、やり残したことをやって、自分の人生に自分でケリをつける。これこそが本人のための、自分軸の終活だと。

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source : 文藝春秋 2025年1月号

genre : ライフ 読書 ライフスタイル