映画やテレビで一世を風靡したバンド「クレージーキャッツ」。リーダーのハナ肇(はじめ)(1930-1993)を筆頭に、個性豊かなメンバーの思い出を、「ガチョーン」など数々のギャグを産んだ谷啓(たにけい)さん(1932-2010)が語る。
私がハナ肇が率いるクレージーキャッツのメンバーに加わったのは1956(昭和31)年のことでした。当時は、まだキューバンキャッツという名前でしたが、単に演奏するだけのバンドではなく、ショーアップした楽しいステージにしたいという彼の考えに共鳴したからです。

それまで私は、フランキー堺さんがリーダーの同じようなショーバンドにいたんです。でも、フランキーさんが日活映画の専属俳優になって、残されたバンドは、銀座のナイトクラブでダンスミュージックの演奏をするのが主な活動になってしまった。
戦後、進駐軍放送(WVTR)から流れるジャズに魅了され、トロンボーン奏者になった私は、一方、折から続々と公開されたアメリカ映画、特に喜劇映画の虜(とりこ)になって、喜劇役者にもなりたいと欲張った夢を抱いていたんです。そんなこともあってフランキーさんのいなくなったバンドの活動に欲求不満を感じていた。じつは、このバンドの仲間に植木屋(植木等)もいたんです。彼が、「それなら面白い男がいるよ」と紹介してくれたのが、ハナちゃんとの出会いでした。
翌年、植木屋も私たちに合流しました。「二人一緒に抜けるわけにはいかないから」というのが理由。“無責任男”で一世を風靡した彼は、じつはそんな義理堅い男でもあったんです。
リーダーのハナ肇がドラムス、植木等がギターと歌、犬塚弘がベース、石橋エータローがピアノ、安田伸がサックスとクラリネット、私がトロンボーン。後年、エーちゃん(石橋)が病気のときにピアノの桜井センリが加わって、最終的に7人のメンバーでクレージーキャッツは活動しました。

テレビの時代にはまった
音楽が大好きなのはもちろん、なによりユーモアの精神に富んだ愉快な仲間たちでした。リーダーのハナちゃんは、見てのとおりの“ガキ大将”で、そんな彼の性格が三十数年間、一人も欠けることなくクレージーが活動できた理由だと思いますね。
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source : 文藝春秋 2006年2月号

