ジャーナリストの大西康之さんが、世界で活躍する“破格の経営者たち”を描く人物評伝シリーズ。今月紹介するのは、マイケル・ブルームバーグ(Michael Rubens Bloomberg、前ニューヨーク市長、ブルームバーグ創業者)です。
マイケル・ブルームバーグ
「トランプに勝てるのはこの男しかいない」
いま、米国でこう評されているのは、昨年11月に米大統領選挙の民主党候補者指名争いに出馬することを表明した前ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグだ。
元は共和党の支持者だったが、トランプが「米国とその価値観を脅かしている」こと、民主党の候補者選びが混沌としていることに痺れを切らせ、自ら立候補した。
ブルームバーグはこう警告する。
「トランプを打ち負かし、米国を立て直すために出馬する。トランプ大統領による無鉄砲で倫理観を欠いた行動がさらに4年続くことに、米国は耐えられない。再選された場合、米国が受けるダメージは二度と修復できなくなるだろう」
ポーランドから米国に渡ったアシュケナジム系ユダヤ人移民の両親の元、1942年にマサチューセッツ州ボストンで生まれた。1964年に、ジョンズ・ホプキンス大学電気工学科を卒業し、ハーバード・ビジネス・スクールで経営学修士(MBA)を取得した。
卒業後は、証券会社大手のソロモン・ブラザーズで敏腕トレーダーとして鳴らし、システム部のトップに就任した。さらに、金融マンとしての成功の証である共同経営者(パートナー)にも上り詰めた。
だが会社が商品取引会社フィブロに買収されると、パートナー制が廃止され、「クビになった」。
とはいえ、30代でソロモン・ブラザーズの重役になった逸材である。再就職の道がなかったわけではないが、大企業の権力争いに嫌気がさしていた。
「大企業では肩越しから君の考えは間違っているという人間がたくさんいる。小さな会社ではそれがない」
1981年、ソロモン・ブラザーズから受け取った1,000万ドル(約10億円)の退職金を元手に金融情報会社「ブルームバーグ」を設立した。金融の世界で生きてきたブルームバーグには1つの確信があった。
「顧客に必要な金融情報を時間や場所を問わず提供すれば、成功できる」
金融情報の配信サービスにはロイター、テレレートといった先行組がいたが、トレーダーの経験があり、自らが情報サービスのユーザーだったブルームバーグは、「使いやすい情報」の提供で大手を猛追する。
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source : 文藝春秋 2020年2月号