闇夜を見つめて半世紀、職人が世界唯一の「光の芸術」を作るまで
※野村陽一さんが登場したグラビア「日本の顔」もぜひご覧ください
私が花火師になって、もう半世紀が経ちました。父は1875年創業の水戸の打上花火製造販売会社・野村花火の3代目で、生まれた頃から両親と親戚が一緒に花火作りをしていました。幼心にもロケットのように高く打ち上げられる花火は爽快で、自然と後を継いで花火を作るのだと思うようになりました。
ただ、大学受験に失敗してそのまま会社を手伝い始めると、まだ10代の若い自分は「このままでいいのだろうか」と忸怩たる気持ちを抱えるようになりました。進学校で大学に行く同級生も多かったし、こんなに早く職人の世界に閉じこもっても自分自身の幅が広がらない。若いうちにもっと外の景色を見た方がいいのではないかと思うようになったのです。結局、一念発起して大学を再受験し東京に出ました。自分も花火をやるぞと腹をくくったのは、大学を卒業して地元に戻ってきた、20代の半ば頃でした。

回り道をして決心しただけに、気合いをいれて花火作りに邁進したのですが、さっそく壁にぶつかりました。どうすれば思うような花火が作れるのか、その手がかりさえ皆目わからなかったのです。
花火の世界は広大な工場や特殊な技術が求められ、新規参入が難しいまさに職人の世界。各会社に「秘伝の技術」があり、「共通の教科書」はありません。各地に独自の技術を持つ一派がいて、簡単には教えてもらえないし、そこで修行しない限り技術もそうそう身につけられないのだと、置かれた状況がわかりました。
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