「超絶的スタントと意外性」バスター・キートン

第243回

芝山 幹郎 評論家・翻訳家

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エンタメ 映画

 バスター・キートンのスタントで、最も記憶に残るのはどれだろうか。

 10人のうち8、9人は、『キートンの蒸気船』(1928)に出てくる「倒れる家」の映像を挙げるのではないか。嵐に襲われて一軒家の前面(ファサード)が剥がれ、家の前に立っているキートンを押しつぶしそうになるあの場面。キートンは微動だにしないが、家は彼をよけて倒れる。2階の窓が開け放たれていて、そこをちょうどキートンの身体がくぐり抜けるのだ。

バスター・キートン ⒸPictureLux/アフロ

 バスター・キートンは、1895年、米国カンザス州ピクアという人口100人足らずの小さな町に生まれた。チャールズ・チャップリンより6歳若く、ハロルド・ロイドよりも2歳若い。両親とも芸人で、父親のジョー・キートンは、息子の主演した映画に、小さな役でしばしば顔を覗かせている。親子だけに、面差しは似ていなくもない。

 キートンは、命がいくつあっても足りないような仕事を続けてきた。

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source : 文藝春秋 2026年9月号

genre : エンタメ 映画