変わった木があるな、と思っていたら、それがいつの間にか立派な巨木に育っていた。
ジョン・リスゴーに対する第一印象は、大まかに言うとこんな感じだった。
だが、自分の考えをよくよく整理してみると、これはやや正確さを欠く。リスゴーは、初見のときから早くも堂々とした樹木だった。幹が太く、枝ぶりが見事で、葉っぱも青々と輝いている。顔と名前を私が覚えたのは『ガープの世界』(1982)を見たときだった。
リスゴーは1945年にニューヨーク州ロチェスターに生まれているから、当時30代後半の年齢だ。映画の世界では目新しい顔だったが、舞台では70年代初めからすでに赫々たるキャリアを積んでいる。落ち着きがあり、風格を漂わせていたのも理の当然だ。
『ガープの世界』で演じた役は、性転換した元フットボール選手のロバータ・マルドゥーンという。193センチの長身に、たくましい筋肉質の体躯。その上、声も朗々と響く。
凡器ならばその外見だけで勝負に出るところなのに、リスゴーは容姿の特権を後回しにした芝居を見せていた。大きいのにこまやかで、こまやかなのにうるさくない。スケールの大きさと、配慮の行き届いた心根の共存が、まさしく立派な樹木を思わせる。技にも隙がなく、主人公ガープを演じたロビン・ウィリアムズがときおりサイコ的に繰り出してくる変化球の数々も、ストレートに打ち返す。いわゆる芝居臭い芝居で迎え撃つことをしないのも、頼もしく映った。
この人は、どんな役でもこなせるのではないか、と私は思った。しかも、いわゆる器用貧乏という枠内にとどまるのではなく、スケール感を保持したまま多彩な役に向かえるタイプ。怪優と言えば怪優だが、興味深い新種の出現だった。
初回登録は初月300円ですべての記事が読み放題
初回登録は初月300円
月額プラン
初回登録は初月300円・1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
電子版+雑誌プラン
18,000円一括払い・1年更新
1,500円/月
※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2026年8月号

