「容姿を貫く技芸の心棒」ティモシー・シャラメ

第238回

芝山 幹郎 評論家・翻訳家
エンタメ 映画

 猫をかぶっていた、と言ってはピント外れになる。これまでが世を忍ぶ仮の姿だった、と言うと誇張が過ぎるだろう。水を得た魚のようだ、と言い換えれば、いくらかしっくりくるか。

 ティモシー・シャラメが、それほど痛烈に変貌した。新作『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』(2025)の彼は、度肝を抜かれるほど面白い。

 1950年代前半のニューヨークやロンドンや東京を舞台に、野心的で突飛な体質の若者が、なんだかわけのわからない動きを見せる。アナーキーとか奔放とか、呼んで呼べなくはないものの、呆れるほど無責任で、破廉恥なまでに女癖が悪く、笑い出したくなるほど銭に汚い。要するに無双の「サイテー男」だ。

ティモシー・シャラメ ©Everett Collection/アフロ

 あのシャラメが……と意外に思う方は少なくないだろう。『君の名前で僕を呼んで』(2017)の美少年。『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021)のヒロイックな貴族。『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』(2024)で扮した、若き日のボブ・ディラン。

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source : 文藝春秋 2026年4月号

genre : エンタメ 映画