スキルがなくても生涯現役
人生を経済的な側面で考えるなら、働く期間が長ければ長いほど収入は増えるのだから、「生涯現役」こそが最適な人生設計で、そのためには専門をつくらなければならないと、これまで繰り返し述べてきた。
これはもちろん正しいのだが、どこか引っかかるものを感じていた。定年後も「この仕事は君にしかできないよ」と頼られるような専門性をもっているひとは、私のアドバイスなど必要としていないのだ。
日本のサラリーマンは、会社に過剰適応しすぎた結果、汎用的なスキルがないといわれる。これが「ジョブ型雇用にシフトしなければならない」とされる理由だが、定年を前にしてそんなことをいわれてもなんの役にも立たないだろう。経済的な不安を抱える日本のシニアが必要としているのは、「専門性がなくても一定の収入が得られる働き方」なのだ。
神舘和典さんはニューヨークでジャズの巨匠たちをインタビューした音楽ライターで、それ以外にもさまざまなテーマの記事を書いてきた。ところが60代になると、仕事が激減してしまったという。
『60歳からのハローワーク』は、そんな神舘さんが、「なんのスキルがなくてもできるシニアの仕事」を体験してみたノンフィクションだ。

結論からいうと、空前の人手不足に苦しむ日本経済では、60代でも仕事はいくらでもある。とはいえ、事務系の人材を募集する会社は、どこも若者に来てほしいと思っているので、シニアに残されたのは「警備、掃除、ビル・マンションや寮の管理」などの身体を使う仕事だ。
しかし、ここでがっかりする必要はない。路線バスやタクシーの運転手、清掃会社などは、ほんとうに人手が足りないので、やる気さえあれば60代でも大歓迎で、年下の上司もみなやさしい。きびしいことをいって辞められたらまた募集しなければならないから、新入りが楽しく仕事ができるようにものすごく気を使っているのだ。
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