男女の関係を結べない夫婦の歩み、ままならない自身の心情を緻密に描いた私小説『夫のちんぽが入らない』から10年。こだまさんが最新エッセイで綴ったのは、父と死別し、雪に覆われた大地で暮らす母の実像だ。
「私の母は、地方のよくない部分を煮詰めたような年配者です。口が悪くて強烈で、過去には、子のいない私に『女の人は子どもを育てて一人前』と当然のように言ってきたこともありました。ただ、悪気はないんですね。だからこそ許したい気持ちと、やっぱり憎らしい気持ちと、両方が心に湧いてくる存在です」
母の娘として日々を重ね、半世紀の時が流れた。今は実家から徒歩10分圏内の家に住み、母との「ちょうどよい距離」を探りながら、その日常を書き記す。

「3年前に父が亡くなったことで、母との関係も変わりました。今までは意識的に関わらないようにしていたのですが、独り身になった母のことは心配ですし、母も何かと電話してくるようになった。最近は私の夫も加わって、3人で出かけることも増えました」
一貫して「私は家族の話しか書けない」と語るこだまさん。見栄を捨て、我が身に起きた出来事をありのままに伝える筆致は、デビュー時から変わらない。
「自分の文章が恥ずかしくて読めないんです。重いエピソードに感情が入り込みすぎていると、まるで自分を悲劇の主人公のように書いていたことに気づいて、ページを捲れなくなる。なるべく淡々と書くように心がけています」

ただ、こだまさんには、触れておかねばならない秘密がある。自身が作家であること、家族の姿を書き続けていることを、身内に一切明かしていないのだ。
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