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「南極大陸以外すべてキャンパス」上智大学・実践型教育の何がスゴいのか

都心にある総合大学の利点を生かしグローバルリーダー人材を育てる上智大学。ローマ教皇の来学を記念し、新たな基金の設置にも取り組む。

「準備された教育の受け手となるのではなく、その一翼を担い、未来への希望を分かち合うことに力を注いでほしい──」キリスト教カトリックのローマ教皇フランシスコは昨年11月、38年ぶりの来日で上智大学を訪問。集まった学生・教職員約700人を前にこう語りかけた。上智大学の曄道佳明学長は「未来を担う学生たちへ想いを伝えるのと同時に、その教育を担う私たち大学にも使命を“託された”と感じました」と話す。

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上智大学長 曄道 佳明(てるみち・よしあき)氏

「貧困や紛争、環境問題などのグローバルイシューは複雑に絡み合っており、大学で一つの学問を修めれば解決できるものではありません。これからの大学は“学びの最終段階”ではなく、正しい社会をつくる素地を養う場であるべきです。国際政治・経済の動き、そして人間社会の本質を見極める複合的な視野があってこそ、弱者に寄り添う現実的な解決策を生み出せると考えて教育を展開しています。教皇のメッセージは、まさにこうした本学の教育を後押しするものでした」

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上智大学を訪問し、学生・教職員向けに講話するローマ教皇

“集約型”の総合大学で複合的な視点を身につける 

 上智大学はカトリックの修道会であるイエズス会を母体として1913年に東京・四谷に開学。現在は9学部29学科を擁する総合大学として、未来を担う若者たちを輩出している。世界の協定校は373校に上り、毎年2000人以上の留学生を受け入れる。文化・宗教の異なる背景を持つ学生たちがそれぞれの知識・経験を生かしながら議論する様子は、まさにグローバル社会の縮図であり、ワンキャンパスでの“集約型”総合大学の利点が生きている。

 曄道学長は「四谷キャンパスは、全学部が集約されたワンキャンパスであると同時に、世界のさまざまな人種や民族が集い議論する“グローバルキャンパス”でもあります。これを両立する環境こそが本学の教育環境の特徴であり、世界でリーダーシップを発揮できる人材育成の基盤となっています」と力を込める。

 もちろん、学びの場は四谷キャンパスにとどまるものではない。途上国に滞在して課題解決に取り組む実践型プログラムも多彩だ。「南極大陸以外すべてがキャンパスになりうる」と曄道学長が話すとおり、学びは地球規模に広がる。

 さらに高い国際性を養うべく、文部科学省のスーパーグローバル大学創成支援事業に基づき、今秋から英語による6学科連携プログラム「Sophia Program for Sustainable Futures(SPSF)」を新設。各学科の専攻分野はもちろん、他学科科目や「持続可能な未来」をテーマにした共通科目を学び、グローバルでの課題解決力や思考力を養うものだ。

「AIの進展によるデータ駆動型社会への移行など世界が劇的な変化を遂げている今、大学自身も従来どおりでいいはずはありません。時代に合わせた変化を遂げていくために挑戦を重ねています」

教皇来学を記念し新たな基金を設置

 若者がこうしたさまざまな教育を享受するには、学生への経済的な支援もまた必要になる。そこで上智大学では、ローマ教皇フランシスコの来学を記念し、「教皇フランシスコ来学記念基金」の新設を決めた。「教皇から“託された”想いを、いかに行動に移していくか──その答えの一つが基金の新設でした」と曄道学長は話す。

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講話に出席した学生は「世の中で弱い立場にある人とともに生き、キリスト教ヒューマニズムの中に生きることを実践していきたい」と語っていた。

 支援項目は、貧困や社会的弱者の救済、多文化共生社会の実現、地球環境問題の解決などに取り組む教育・研究活動や、学生活動への支援などを検討しており、すべて返還不要の給付型の支援になる。

「『他者のために、他者とともに』という本学の教育精神を理解し学んだ若者たちなら、支援を受けて得た力を、正しいと信じる社会のために発揮してくれるはずです」と曄道学長は期待を込める。支援を受け四谷から巣立った若者たちが、教皇の想いを実現し引き継いでいくはずだ。

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source : 文藝春秋 メディア事業局