88歳主演監督 クリント・イーストウッド会見記

芝山 幹郎 評論家・翻訳家
エンタメ 芸能 映画

ついに会えたレジェンドは、“シンプルで謙虚な超人”だった

クリント・イーストウッド氏 ©文藝春秋

 クリント・イーストウッドが新作を撮った。しかも10年ぶりの監督・主演作だ。88歳という年齢を聞いて仰天する人は多いようだが、世の中には例外がある。私は感心したが、驚かなかった。イーストウッドならできる、と思っていたからだ。

 ただ、どんな変化があるか、という興味はあった。経年などという身も蓋もない要因ではなく、いままでとは異なった境地にたどり着いたときの速度や密度の変化。速度が落ちて密度が上がるケースはあるだろうし、速度や密度が下がって精度が高まるケースも考えられる。それともうひとつ、イーストウッドの土台を支える「核」はどう維持され、どう深まってきたのか。

 興味は募り、期待は高まった。そして新作『運び屋』(公開中)は乗り心地のよい映画だった。原題はThe Mule(ラバ)。麻薬の運び屋を意味する俗語で、映画は実話をもとにしている。

 イーストウッドは1930年5月に生まれた。同い年(昭和5年生まれ)の現役映画人はもはや少ない。

 スティーヴ・マックイーンは1980年に病没した。ショーン・コネリーやジーン・ハックマンやジーナ・ローランズの姿を新作で見ることも、ほぼ絶えてしまった。早々と世を去ったジェームズ・ディーン(1931〜55)や市川雷蔵(1931〜69)は、イーストウッドよりも年下だ。他にいまも第一線に立つ人といえば、あのジャン゠リュック・ゴダール監督ぐらいしか思い当たらない。ロマン・ポランスキーやウディ・アレンはもう少し若い。

 私は小学生のころ、初めてイーストウッドの姿をテレビで見た。1959年に日本でも放映が開始された『ローハイド』で、彼は牛を大移動させるカウボーイ集団の副隊長ロディ・イェーツ役を演じていた。

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source : 文藝春秋 2019年4月号

genre : エンタメ 芸能 映画