★事務次官2人の絆
霞が関の双璧をなす財務省と経済産業省。両省は、法人税率引き下げなどをめぐり、対立する局面が多かったが、このところめっきり波風が立たなくなった。嶋田隆経産事務次官(昭和57年、旧通産省入省)と岡本薫明(しげあき)財務事務次官(58年、旧大蔵省)が、それぞれの役所をがっちりコントロールするようになったからだ。
岡本氏は15年近く、財政健全化の道筋を組み立てることに精力を傾けてきた。政府が基礎的財政収支の赤字解消を初めて掲げたのは、2006年の「骨太方針」で、現在に至るまで財政再建の基本になっている。主計局調査課長だった岡本氏は、裏方として走り回り、この方針をまとめ上げた。
一方、嶋田氏は、財政再建派で自民党の財政改革研究会の会長だった与謝野馨氏の腹心として、党内対立のはざまで立ち往生しかける岡本氏を支え、本音で語り合ってきた。岡本氏を主計官僚として育てた元財務次官の香川俊介氏(54年)が、嶋田氏の開成高校の先輩だったことも2人の関係を後押しした。
さらに嶋田氏は、「霞が関のセンターフォワード」を自認していた前経産次官の菅原郁郎氏(56年、旧通産省)とは対照的に、財務官僚と広く深い関係を築いた。
また、経産省内でも、バランスの取れた政策と重厚な人柄で信頼を集めている。「官邸に気に入られそうな政策ばかり探していた菅原氏の時代と違い、いまはじっくり政策に取り組める」(若手課長)とされ、ベンチャー企業や、地方創生に貢献している民間団体の視察にも積極的だ。
岡本氏は、嶋田氏のことを「一生付き合っていきたい先輩。本当の仲間だと思っている」と語ることがある。盟友関係を長く続けてきた2人が、後輩にバトンタッチするまであと半年余り。両省の良好な関係が続くかは、政権の経済運営にも影響する。
★伝統的外交への引導
ロシアとの北方領土交渉が官邸官僚の主導で進むことがより鮮明となった。安倍晋三首相とプーチン大統領が合意した「1956年の日ソ共同宣言」を基礎とする交渉とは、歯舞群島と色丹島の2島だけを引き渡すものだが、これは今井尚哉(たかや)首相秘書官(57年、旧通産省)が主導し、北村滋内閣情報官(55年、警察庁)も協力して進めたアプローチ。つまり、4島返還を掲げてきた外務省の方針が排除されたのだ。
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source : 文藝春秋 2019年1月号