〈受賞作〉『女帝 小池百合子』 文藝春秋刊 石井妙子(いしいたえこ)
正賞 百万円 副賞 日本航空提供の国際線往復航空券
公益財団法人 日本文学振興会
選考経過
第52回大宅壮一ノンフィクション賞選考委員会は5月13日に都内で開催されました。梯久美子、後藤正治、佐藤優、森健の四選考委員が出席(出口治明委員は欠席)し、討議の末、頭書のとおり受賞作が決定いたしました。
なお、受賞作以外の候補は以下の4作です。
片山夏子『ふくしま原発作業員日誌 イチエフの真実、9年間の記録』朝日新聞出版、佐々涼子『エンド・オブ・ライフ』集英社インターナショナル、春名幹男『ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』KADOKAWA、山本草介『一八〇秒の熱量』双葉社
これらの作品は2020年中に刊行されたノンフィクション作品全般から予選を通過したものです。
受賞の言葉
石井妙子
本書は「学歴詐称に迫った小池百合子都知事の暴露本」と紹介されることも多いのですが、私がまず書きたかったことは女性初の総理候補者と言われる「小池百合子」とはどのような人物であるのか、可能な限り調べ、明らかにすることでした。何を見て、何を考え、生きてきた人であるのか。また、彼女を生み出した平成という時代も見つめ直したいと思いました。
空を掴むような虚しい作業の果てにようやく見えてきたのは、虚像の下に巧みに隠された彼女の実像です。次々と明らかになる事実に私は驚きました。彼女は虚飾に虚飾を重ねて「理想の自分」を作り上げ権力の階段を駆け上がっていった。学歴詐称は小さなエピソードのひとつにすぎません。どこまで書くか、大変に悩みました。出版後に何が起こるか。証言者の安全を守り切れるのか。やめておけ、という横やりも入ります。
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source : 文藝春秋 2021年7月号