昭和の軍人に見る「日本型悪人」の研究

平気で居直り、ウソをつく人たち

保阪 正康 昭和史研究家
ライフ 社会 昭和史 歴史

今も昔も、組織に巣くう悪い奴らがいる

 昨年来、霞が関の官僚やアマチュアスポーツ界の指導者の不祥事が次々と明るみに出ています。そのほとんどは組織の下僚ではなく、組織のリーダー的な存在によって引き起こされたものでした。

 3月には、財務省の文書改ざん問題で佐川宣寿国税庁長官(当時)が辞任。5月には、日本大学アメリカンフットボール部の内田正人監督(当時)とコーチが意図的に対戦相手の選手にケガを負わせる事件が発覚して辞任。そして7月、日本ボクシング連盟の山根明会長(当時)による連盟の私物化が明るみに出て、これまた辞任に追い込まれました。

佐川宣寿氏 ©時事通信社

 彼らはみな、当初は「自分の責任ではない」と公の場で堂々と述べています。ところが次々と不正が明らかになり、「もう逃げられない」となった段階になってようやく職を辞しました。そこに潔さはまるでありません。辞任に至るまでの振る舞いは実に見苦しいものでした。

 平然とウソをつく、白を黒と言いくるめる、失敗すると居直って部下に責任をなすりつける、そして正論をぶつけてくる相手を攻撃する――昭和の軍人たちを彷彿とさせると私は感じました。

 昭和の軍人がすべて愚かだったわけではありませんが、太平洋戦争の最大の敗因は、陸軍にも海軍にも、“権力を持った愚将”が組織に蔓延したことでした。巷間、「アメリカと日本は国力で10倍以上の差があった」と物量の差ばかり指摘されますが、決定的だったのは、むしろ日米の軍人の能力の差でした。

 例として昭和18年、前線視察に出掛けた連合艦隊司令長官の山本五十六がブーゲンビル島上空で撃墜された時の話を紹介しましょう。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
新規登録は「月あたり450円」から

  • 1カ月プラン

    新規登録は50%オフ

    初月は1,200

    600円 / 月(税込)

    ※2カ月目以降は通常価格1,200円(税込)で自動更新となります。

  • オススメ

    1年プラン

    新規登録は50%オフ

    900円 / 月

    450円 / 月(税込)

    初回特別価格5,400円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります。2年目以降は通常価格10,800円(税込)で自動更新となります。

    特典付き
  • 雑誌セットプラン

    申込み月の発売号から
    12冊を宅配

    1,000円 / 月(税込)

    12,000円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります
    雑誌配送に関する注意事項

    特典付き 雑誌『文藝春秋』の書影

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2018年10月号

genre : ライフ 社会 昭和史 歴史