自民党はなぜ物言えぬ党になった。総裁選で堂々と政策論争しよう
私は国会議員在職33年目になりました。閣僚も通算で6年務めさせていただき、自民党の幹事長も政調会長も務めました。
これだけ長く国会に議席を置かせていただいて、党や政府の役職も重ねさせていただいた者には、それなりの責任があると思います。そして、自民党のいまの状況を見て何も言わないということは、私にはできません。この期に及んで、「浅学非才の身ですから」とへりくだってばかりいるとしたら、有権者や自民党員に対して無責任だと思っています。
私は、個人的な信条として、閣僚と党三役を務めている時は総裁選には出ないと決めていました。「自らが閣僚、あるいは党の役職に就いて支えている政権に異を唱えるのはおかしい」という考え方からです。ですから、安倍内閣で地方創生担当大臣を務めていた3年前には、総裁選には出ませんでした。そして安倍総理以外に立候補者はなく、無投票で再選されました。
今回も誰も出なかったら、自民党の総裁選は6年間、無投票ということになります。それはやはり自民党員に申し訳が立たない。「4000円払って党員になると、総裁選で投票できます」と宣伝して懸命に党員を集め、100万人を超えるところまでお願いしてきた経緯があります。
私はこれまで平成20年と24年の2度、総裁選に出た経験がありますが、出なかった時も含め、出るか、出ないかについては、幾晩も寝られないほどの葛藤が続きました。昭和57年、中曽根康弘先生に対抗してお出になった中川一郎先生が、敗れたあと自ら命を絶たれた歴史もある。それほど辛い、苦しい決断です。
だから今回、岸田文雄さんが出馬を見送られたことにも、相当の苦悩があっただろうと思います。岸田派内にも「出るべし」「見送るべし」双方の意見があり、どちらも尊重したい、その末に出された結論だったことでしょう。
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source : 文藝春秋 2018年09月号