戦前は陸軍に同調し、戦後はマルクス主義の夢を貪った革新集団(構成:栗原俊雄)
統一地方選挙と衆参補欠選挙が終わったが、自公連立政権に揺らぎはなく、国民の政治的無関心が露呈したかたちである。日本は内外に深刻な問題があるにもかかわらず、有権者の半数以上が投票しない。まさに国家として危機的な状況にある。
かくも政治的無関心が常態化してしまったのはなぜか。その原因として、自民党に代わりうる選択肢がないという現実がある。立憲民主党をはじめ野党は、自民党に対抗できる勢力にはなっていない。そのため政治に希望が見出せず、「選挙に行かなくても結果は同じだろう」と投げやりな有権者が多いのではないか。
だが、かつては社会党という対立軸があった。一時は保守陣営を脅かすほどの勢力をもち、政権与党となったこともある。ところが1990年代前半、冷戦構造の崩壊とともに社会党は急速に党勢を失った。
今回は、なぜ社会党は自民党に代わりうる存在になりえなかったのか、その地下水脈は現在の日本社会にどのようなかたちで流れているのかを考えてみたい。
軍部にすり寄る国家社会主義者
本連載第5回(2020年11月号)で見たが、日本における社会主義政党の源流は、明治31(1898)年に安部磯雄、片山潜、幸徳秋水らが中心となって発足した「社会主義研究会」に遡る。当時はロシア革命(1917年)の前であり、この頃の社会主義はマルクス主義ではなく、キリスト教的な人道主義や英国の社会改革者ロバート・オーウェンの空想的社会主義の流れを汲んでいた。今日的な意味での社会主義というよりも、「社会正義」の実現を追求する思想と解釈するほうが、実態により近いかもしれない。
明治34年には社会主義研究会を母体として「社会民主党」が結党されたが、結党のわずか2日後に治安警察法により解散を命じられる。さらに明治43年の大逆事件を受けて弾圧はエスカレートし、社会主義勢力は一時根絶やしにされた。
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source : 文藝春秋 2023年6月号