「タモリさんのおかげで、芸能界で居場所を見つけられた」。30年近く見続けた“師”タモリ(76)の姿を、「新しい地図」のメンバーである草彅剛氏が語った。
草彅さん
「笑っていいとも!」の印象が強いかもしれませんが、僕とタモリさんとの出会いは「タモリの音楽は世界だ」(テレビ東京系で1990~96年放送)が最初で、1人でバラエティに出演したのも、それが初めてでした。なぜか番組のリニューアルに合わせて、途中からレギュラーになったんです。
タモリさんは、僕が出演していたことは覚えてないと思います。タモリさんって、寄せ付けないオーラがあって、番組の外では全然話してくれません。僕も20歳そこそこで、緊張しっぱなしでした。でも、タモリさんと接していると、なぜか魅力的で、隠しきれないやさしさが漂ってくる。それで「この方に近づきたい」と強く思うようになりました。
中居(正広)くんと(香取)慎吾ちゃんに1年遅れて、95年から僕もいいともに出演することになりました。「これはお近づきになれる大チャンスだ」と思って、嫌われてもいいから、「タモリさん、タモリさん」って、金魚のフンみたいについて回りました。
最初に食事に連れて行ってもらったのが、新宿アルタの近くにあるラーメン屋さん。生放送が終わった後、「俺、ここのつけ麺が好きなんだよ。よかったら剛も行くか」と言ってくれて。タモリさんはテレビのままの調子で、「これ美味いんだよ」と言うだけで、取り立てて話題を作ろうとしない。僕も緊張して、ただつけ麺とタモリさんに向き合うしかなくて、「美味しいですね」と返すのが精いっぱい。でも、なぜか居心地がよくて、楽しかったですね。
タモリさん
それからは、いいともが終わったら、ほぼ毎週、一緒に昼食を食べる関係になりました。その当時、SMAPはドラマ班とバラエティ班に分かれていて、僕はどっち付かずだった。でも、タモリさんと番組でお会いするのが楽しみになって、「僕にも居場所がある」と思えるようになったんです。いいともに出演したことで、僕の人生が開けました。
ある夏の日、タモリさんが「船に乗るからおいで」と言うので、行ってみたら、会ったことのないタモリさんの友だちばかりでした。東京湾を一周する間に、手品を見せてくれたり、みんなでゲームをしたり。お酒も飲みましたが、何を話したかはあまり覚えていません。でも、その後に残るのはタモリさんのやさしさと、楽しかったという感覚。ちなみに僕の親友の一人は、そこにいたタモリさんの友だちの一人です。
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source : 文藝春秋 2022年1月号