行き過ぎた市場原理主義に警鐘を鳴らした経済学者・宇沢弘文(1928~2014)の思想が、コロナ禍のいま改めて注目されている。地域医療に従事する長女の占部まり氏が振り返る、宇沢経済学の原点。
占部氏
「つるとかめが合わせて3匹います。足の数が9本です。さあ、つるは何匹、かめは何匹?」
父の宇沢弘文が孫たちにつるかめ算を教えるとき、こんな「難題」を出していたことをよく覚えています。常識で考えると、つるは2本足、かめは4本足。でも、それだとこの問題に答えることはできません。
孫たちが「ありえない!」と騒ぐと、宇沢は「つるが足をたたんで寝ていたんだよ」とか「かめは交通事故で足が1本なくなっちゃったの」などとおどけて、みなが「ずるい!」とキャーキャーいうのを楽しげに眺めていました。
宇沢弘文
父の経済理論は、数学を用いて厳密に構築されています。数学は言語や文化、時代を超えて伝えることができます。ですから、自分の考えを未来へ引き継ぐために父にとって最適なツールだったと思います。
父は、人々がゆたかに暮らすために必要なものを「社会的共通資本」とし、それらは利益を貪るための道具ではないと考えました。医療や教育は、利潤の追求を前提にしてはならない。もしそうなれば、逆に人は貧しくなってしまうだろう、と。
こうした宇沢の考え方は、昭和天皇からかけていただいたこの言葉にすべてが集約されています。
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source : 文藝春秋 2022年1月号