リクルートの株式時価総額は2021年、国内4位になった。創業者の江副浩正(1936~2013)は、リクルート事件で知られるが、天才的な起業家でもあった。元部下の伊庭野基明氏が語る。
私は元々日本IBMのシステム・エンジニアで、米国のビジネススクールを経て、1986年暮れに中途入社しました。面接の時、江副さんに「入るか入らないか、ここで決めてくれ」と言われ、「せっかちな人だなあ」というのが第一印象でした。
入社するとすぐ「米国に行ってくれ。ニューヨーク、ロンドン、東京(川崎)にコンピューター・ビルを建てて、海底ケーブルで結んでお客さんに使ってもらう」と言う。通信機能を備えたコンピューター・ビルは当時、テレポートと呼ばれていましたが、今で言うデータセンターです。
赴任した私はマンハッタンから車で1時間くらいのスタッテン島で野村証券が建設していたテレポートに拠点を構え、現地スタッフを採用し始めました。気の早い江副さんはその時点でトップ営業を始めます。プラザ合意で始まった急激な円高に対応するため多くの日本企業が海外進出を急いでいた時期です。江副さんはこう売り込みました。
「ウチのコンピューターは日米欧の24時間体制。皆さんが寝ている間に働いてくれます」
江副浩正
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source : 文藝春秋 2022年1月号