「世界のオザワ」として知られるカリスマ指揮者・小澤征爾(86)。同じく世界で活躍するチェロ奏者の堤剛氏が、“盟友”小澤との思い出を語った。
堤さん Ⓒ鍋島徳恭
小澤征爾さんは桐朋学園音楽科の1期生で私は7期。少し年齢が離れてはいるものの、ともに桐朋学園オーケストラで、齋藤秀雄先生の指導を受けていたという間柄です。
齋藤先生の指導は誰もが縮み上がるほど厳しいのですが、当時からやんちゃだった小澤さんと私は叱られる頻度で他を圧倒していました。
のちに世界的指揮者になる小澤さんですが、元はピアニスト志望。1956年に私が「文化放送賞」のコンクールでサン=サーンスのチェロ協奏曲第1番を演奏したとき、ピアノ伴奏は小澤さんでした。おそらく齋藤先生から「お前が弾いてやれ」と命じられたのだと思いますが、素晴らしい伴奏のおかげで優勝することができました。
小澤さんが世界中の音楽家から慕われる一番の理由は何なのか——。チェリストのロストロポーヴィチやヨーヨー・マは、「セイジは心で音楽を作る」と語っていますが、まさにこれに尽きるのです。
小澤征爾
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source : 文藝春秋 2022年1月号