今では誰もが口ずさむ、金子みすゞ(1903~1930)の詩。没後、長らく作品は埋もれていたが、童謡詩人の矢崎節夫氏の手によって現代に蘇った。
大漁 金子みすゞ
朝焼小焼だ
大漁だ
大羽鰮の
大漁だ。
浜は祭の
ようだけど
海のなかでは
何万の
鰮のとむらい
するだろう。
大学1年の時、岩波文庫の『日本童謡集』で『大漁』を読み、強い衝撃を受けた。もっと読みたいと思ったが、金子みすゞの作品と生涯は童謡を愛する人々の間で幻の童謡詩人と語り継がれるばかりで、出会う機会がなく、月日だけが過ぎていった。
それから16年後の昭和57年、実弟上山雅輔氏に辿り着き、みすゞ自筆の童謡集に書かれた512編とその生涯を知る事が出来た。
金子みすゞ(本名テル)は明治36年、山口県大津郡仙崎村(今の長門市仙崎)に生まれる。下関の親戚の商店から、大正12年6月から昭和3年の5年間に、主に雑誌『童話』に90編ほどの作品を投稿、西條八十に「若き童謡詩人の中の巨星」と称賛されたが、昭和5年3月、26歳の若さでこの世を去った。
金子みすゞ Ⓒ金子みすゞ著作保存会
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source : 文藝春秋 2022年1月号