2010年、54歳の時に食道がんの手術を受けた桑田佳祐(65)。彼の復活の裏には、少年時代から続く「ボウリング愛」があった。交友を続ける矢島純一プロが語る。
矢島さん
50年近く前のことです。パシフィックホテル茅ヶ崎にボウリング場が併設されていて、そこに通っていた桑田さんのお父さんと知り合いになったんです。佳祐くんはまだ中学生か高校生だったのですが、お父さんに連れられて来ていました。
それからまた、二十数年前のことです。六本木のジャズクラブのママさんから、「サザンの桑田さんが会いたいと言ってるから、純ちゃんも来ない?」と電話があった。行ってみると、「子どもの頃、人垣の後ろから純さんが投げるのを見てたんです」って懐かしそうに話してくれた。もちろんサザンの存在は知っていましたが、あの桑田さんの息子さんがサザンの桑田さんなんだって、実はこの時初めて知ったんです。
手術後、元気がなさそうだったので、還暦祝いにボール、バッグ、シューズを贈りました。そしたら1週間ぐらい経ち、「ボールを開けてくださいよ(手の形に合わせて指の穴を開けること)」とやって来て、3、4ゲーム投げて帰りました。
それをきっかけに、ボウリングで体を動かすようになってから調子がよくなり、声も出るようになった。コンサートに行くとスゴイですよね。「ひとり紅白」の時は3時間半で50曲以上休まず歌い切る。なのに、終わって楽屋挨拶に行くと「純さん!」って、いつもと変わらない調子で駆け寄って来てくれる。
桑田佳祐
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source : 文藝春秋 2022年1月号