角栄最後の愛弟子大いに吼える 安倍恐怖政治が自民党をダメにした

特集 日本の政治をリセットせよ

中村 喜四郎 衆議院議員
ライフ 政治
田中角栄氏 ©文藝春秋

 平成のはじめ、永田町の羨望を集めた1人の政治家がいた。
 中村喜四郎衆院議員である。
 日大卒業後、田中角栄元首相の秘書を経て27歳で政界入りした。平成元年に発足した宇野内閣で「戦後生まれ初」の40歳の若さで初入閣。隆盛を極める竹下派では、小沢一郎の後を追う「将来の総理候補」として鳴らした。
 ところが、平成6年にゼネコン汚職事件で逮捕され、自民党離党。有罪確定で失職し、収監された時期もあったが、刑期を満了すると再び当選、異例の復活を果たす。
 衆院選14戦無敗を誇る「最強の無所属」も、今年で議員生活40年。前述の小沢、野田毅に次ぐ衆院3位の古株でありながら、権力闘争からは一線を画してきた。
 春、69歳を迎えた中村が突如目覚めた。6月の新潟県知事選で野党が推す女性候補の応援に動いたのだ。告示前日、県内に講演に来た小泉純一郎元首相に彼女と握手させ、最大の争点だった原発問題での共闘を演出。4度も現地入りし、野党が苦手とする地上戦を展開した。角栄ゆかりの地元有力者や相手陣営の幹部たちと接触し、保守票の切り崩しを試みた。
 結果は惜敗。与党系候補が54万6670票、野党系候補は50万9568票だった。中村は負けてもなお、古巣を追い込む確かな手応えを得ていた。
 四半世紀も沈黙を続けた男はなぜ今、「決起」したのか――。大のマスコミ嫌いの中村がついに取材に応じ、はじめて決意を語った。

 今回の新潟県知事選は今後の国政を占う大変重要な戦いだと認識し、私は野党陣営で少しばかりお手伝いをしました。結果は、3.4ポイント差で野党統一候補が敗れましたが、相手と同じ50万票台に乗ったことは大きかった。仮にあと1万票足りず40万票台だったら、政権与党をもっと増長させていたでしょう。貧弱な野党がよくぞそこまで追い詰めたというのが、率直な感想です。

 与党は二階俊博自民党幹事長の指揮の下、各種団体を総動員し、市町村長を先頭に立たせ、創価学会をフル回転させるというなりふり構わない物量作戦を展開しました。今の野党はそれに対し、選挙に勝つということに貪欲ではなかった。勝てない野党は必然的に国民の関心外になります。野党とは政策の議論をする以上に、いかなる選挙においても勝つという執念を燃やし、結果を出さない限り、存在感は示せません。

 しかし知事選後も、野党には元気がありません。自民党に立ち向かわないで、仲間同士で無意味な路線対立を続けています。そんな中、私は「やればできるじゃないか」「来年の参院選が楽しみだ!」と野党の人たちと会うたびに励ますようにしています。そうやって熱く吼える人間が、今の野党に1人くらいいなくては駄目だと思って発破をかけています。

 私はあの事件以来、政権には与(くみ)しない立場を貫いてきました。四半世紀も司法権力の暴走と対峙し、選挙を通して国民の負託を受けながら、一貫して無罪を訴えた男です。権力の危うさというものを、身をもって体験した一人として、何が何でも権力側に寄るわけにいかないのです。

「日本一選挙が強い男」

 無所属を貫いてきた私も一時期だけ草鞋を脱ぎ、改革クラブという小政党に属したことがありました。そこは民主党政権に対抗する野党で、下野していた自民党と院内会派を結んでいました。私は当時の自民党総裁だった谷垣禎一さんと幹事長の大島理森さんから要請を受け、4人になった改革クラブの政党要件を回復させるために一時的に身を置くことになったのです。その後、同党が自民党との会派を解消すると、私は離脱して、無所属の立場で野党の自民党と会派を組み直しました。

 それから、二階さんのいる自民党の派閥に客分という形でいたこともありましたが、2012年に自民党が政権に復帰してからは、共闘する意味がない。向こうも院内会派はいらなくなったということで、距離を取ることになりました。

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source : 文藝春秋 2018年08月号

genre : ライフ 政治