いまは亡き私の大好きだった2人の「17歳」の時の日記2冊を同時に開き、これはどうしたものかととまどっている。ただでさえ他人の日記を見る、のぞくというのは背徳感からドギマギするものだが、その2人がまったく同じ1936年生まれというのが奇跡なのだ。
日本も2人も青春まっ只中。1953年、17歳の2人は東京の空の下同じ空気をすい同じ雨を浴びていたのだ(私はまだ5歳だったが同じ空気をうっすらすっていた)。2人はお互いの存在を勿論まだ知らない。昨年秋たてつづけに「17歳」の時の日記が出版され本当におどろいた。
『だいありぃ 和田誠の日記1953~1956』(文藝春秋)は、当時から独特のあの可愛らしい手書き文字の日記で、のちに大成するのを予感させるイラスト入り。奥方である平野レミも帯に「17歳から19歳の和田さんのキラキラした青春が詰まっていました」と書く。
映画とイラストと音楽に明け暮れる日々、一切女の子の話は出て来なかったのでレミさんも安心して出版をOKしたのでしょう。和田誠は当時、世田谷区は代田に住み、都立の千歳高校へ通っておりました(私も千歳高校へ行こうとしたのですが点数が相当足りなくて私立日本学園へ行きました。吉田茂、横山大観の後輩です。私の住まいは世田谷の千歳船橋。森繁久彌の家のそばです)。私の経歴はともかく……和田誠。“お楽しみはこれからだ”です。
同い歳のもう一人の日記は……これもいきなり出版されてびっくりしました。
『談志の日記1953 17歳の青春』(dZERO)。昨年の11月21日が談志没後10年ということでたくさんの本が出版されましたが(談志著の『酔人・田辺茂一伝』なる珍なるものも中公文庫から出版され、これの解説はやはり珍なる私がやらせて頂きました)、その中でもぶっちぎりで面白いのがこの17歳の日記です。
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source : 文藝春秋 2022年3月号