本書はイスラム思想の研究者である飯山さんが、エジプト・カイロで暮らした4年間の日々を綴ったものだ。飯山さんが夫と娘の3人でエジプトに渡ったのは2011年の夏。同年2月には、約30年にわたり独裁政権を築いたムバラクが「アラブの春」によって失脚しており、エジプト国内の政治、経済、社会は大混乱に陥っていた。
「徒歩は危険なので出掛ける時はほとんど車移動でしたが、すぐ近くの車が爆弾で吹っ飛ばされたこともあります」
日常生活の中で、飯山さんは様々なエジプト人と出会う。例えば、運転手として雇っていた男性。彼は厳格なイスラム教徒である一方、異教徒である日本人に雇われ、日本人から給与を得ていた。イスラム教の教義では、異教徒と親しくすることは禁じられているが……。
「多くのイスラム教徒は、教義と日常生活の間に一定の距離をとっている。自分の行動が合法か違法かをいちいち考え出すと、生活が成り立たないからです。一貫性を突き詰めはじめて、一気に過激な行動に出る人もいます」
激動のエジプトに身を置き、何を感じたのか。
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source : 文藝春秋 2022年3月号