文学界に彗星のごとく現れた作家の永井みみさん。現在56歳。ケアマネージャーとして働くかたわら執筆した『ミシンと金魚』が話題だ。これがデビュー作。すばる文学賞を受賞し、選考委員は口を揃えて「傑作だ」と絶賛する。
「今から20年以上前ですが、小説の執筆に集中して取り組んだ時期があったんです。当時の私は専業主婦でしたが、作家になりたくて。自分なりの方法論も持っていたんですね。でも、2004年に芥川賞を受賞した金原ひとみさんの『蛇にピアス』を読んで衝撃を受けた。わずか20歳ながら、彼女の経験の蓄積と身を削る姿勢に圧倒されて、『これは私には無理だ』と諦めていたんです」
それからは訪問ヘルパーとして6年働き、現在のケアマネージャーになって6年が経つ。今作は、そんな永井さんの現場体験を活かした作品とも言える。
主人公のカケイさんは認知症だ。ろくに足腰が立たず、嫁に浣腸されて排泄し、トロミをつけないとお茶が飲み干せない。「半分、死んでる」。カケイさんは自嘲気味に語る。だが、物語が3分の1を過ぎたあたり、彼女がポツリ、ポツリと語り始める人生は、壮絶そのものだ。
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source : 文藝春秋 2022年4月号