「品格なき大国」ロシアより危険!

驕れる中国とつきあう法

藤原 正彦 作家・数学者
ニュース 国際 中国
中国の噓は不治の文明である。弱腰で臨んでいては籠絡されてしまう──
中国総トビラ①
 
藤原氏

「えっ、羞恥心は」

 経済力をもった中国の人々が海外に出るようになって以来、その行儀悪さが世界中に知られるようになった。道にツバを吐く、ゴミをポイ捨てする、列に並ばない、道路や室内や車内で大声でしゃべる……と枚挙にいとまがない。十数年前に北京から内モンゴルまで旅した私は、本場の凄さに仰天した。道路はクラクションの騒音で満ち、強引に割り込む車は後をたたず、歩道に乗り上げて追い抜く車さえある。歩いて入りかけた北京の裏通りはゴミで溢れ、思わず引き返したほどだ。公衆便所については万年筆が汚れそうで書きたくない。道の向うでは人々がわめき合っている。剣幕に驚き、日本への留学経験がある通訳に尋ねた。「あの連中は喧嘩しているの」「いや普通の会話です」「あなたも普段はあんな大声で」「はい」。裏通りの余りの不潔に「よくあんな状態で皆我慢しているね」と聞いたら、「1980年頃までは、北京市内でも家に便所のない家が多く人々は道で大小便をしていました」と事もなげに言う。「えーっ、若い女性は」「もちろんしていました」「えっ、羞恥心は」。思わず叫んだ私に彼は、「だって仕方ないじゃないですか」と言った。これだけは説得力のある答えだった。

 行儀悪さに止まっていればよかったが、ここ数年来、中国人の嘘がこれまた世界中に知られるようになった。誰でも時には嘘をつくだろう。正義の味方として名高い私でさえ、時々(女房の前ではしばしば)嘘をつく。ただ中国人の嘘は苦笑いですませられる嘘とは限らない。

新型コロナにジェノサイド……嘘つき国家の罪

 新型コロナでは、おそらくウィルスの発生源でありながら当初、人から人へ感染することを隠蔽し、武漢における惨状も明らかにしなかった。このため2020年1月だけで、武漢を初めとする中国から数百万人が海外渡航し(日本へは73万人)ウィルスをまき散らした。その後もWHOによる発生源調査を先延ばしにし、重大証拠をすべて消去し終えた1年後に、調査団に一部だけを公開した。チベット、内モンゴル、ウィグルなど少数民族を漢化するため、ジェノサイド(大量虐殺)を行ない、民族の生命線たる言語を奪い、数10万人に中絶手術や不妊手術を強制し、漢人を大量に移住させている。これら3地域は歴史的に中国のものでなく、文字も法律も宗教も中国とは違っていた。領土を拡大した清朝でも藩部と呼ばれ、漢族の居住する地域とは異なり、自治が認められていた。中国の行っている少数民族迫害は世界を震撼させ、激しい非難を浴びているが、得意の嘘で糊塗している。ウィグルで100万人以上を送りこんだ「強制収容所」は、再教育センターや職業訓練センターであり、大量の不妊手術は本人の意志、と言い張るのだ。南シナ海の島々や尖閣諸島は歴史的に自国領と嘘をつく。台湾の李登輝元総統は、「中国人は隣の奥さんが美しいと自分の妻だと言う」と言ったが、まさにその通りなのだ。中国人の異常とも言える虚言癖について、日本人は昔から知っていた。最近でも、2008年の毒ギョーザ事件や2010年の中国漁船による海保巡視船への体当り事件などにおける嘘や開き直りは誰でも覚えている。ただ欧米は遅蒔きながらウィグルでの蛮行やコロナ禍によりやっと注目し始めたのである。

「14億総スパイ宣言」

 美しいスローガンと共に成立した中華人民共和国は成立以来、恥ずかし気もなく歴史の改竄に励んできた。選挙で選ばれたわけでもない中国共産党に中国を支配する正当性を付与しようと、自分達が凄惨な抗日戦争に勝利し中華人民共和国を建設したと、毛沢東から習近平に至るまでが繰り返し言明している。日中戦争は日本軍対蒋介石率いる国民党軍との戦いである。毛沢東率いる共産党軍は日中戦争の端緒となった盧溝橋事件より前に、国民党軍に追われ1万2000キロもの距離を敗走し、僻地の延安に命からがら辿り着き、じっと洞窟内に潜んでいただけだ。この敗走は長征と言い換えている。なお国民党軍も日本軍に対しては連戦連敗で、終戦時には100万人余りの日本軍が中国を占領していた。日本が負けたのは日米戦争であり、形式的に連合軍に降伏することとなり、たまたま中国が連合国に属していた、というだけである。

 ついでだが、中国はしばしば反日カードとして「南京大虐殺」を用いる。ただ、事件が起きたとされるのは1937年12月だが、それからの10ヵ月間に国民党中央宣伝部は外国人記者会見を300回ほど開き、世界世論を味方につけようと日本軍の蛮行を訴えていたが、南京での市民虐殺や捕虜不法殺害については1度も言及していない。9年後の東京裁判で突然飛び出し、証拠なしに事実と認定されたものだった。

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source : 文藝春秋 2022年4月号

genre : ニュース 国際 中国