介護保険制度の変更で現場に何が起こったのか
加藤勝信厚生労働相から介護をめぐる重要な発言が飛び出したのは、2月20日、衆院予算委員会でのことだった。
「一部の大手事業者がサービス事業を廃止する動きがあるとの報道は承知しております。私どもも照会を行っており、本年1月時点で、廃止する事業所があると回答した市町村は250市町村でございます」
この答弁はNHKで生中継されており、視聴していた全国の介護関係者は息をのんだ。介護難民が出るかもしれない――危惧されていた事態が現実味を帯びつつあることを、厚生行政のトップが認めたからだ。
経緯を振り返っておこう。2015年の介護保険制度改正によって、介護の現場は大きく様変わりしてきた。介護が必要な度合いは制度上7つの段階に分かれているが、このうち「軽度」とされる「要支援1〜2」の訪問介護と通所介護(デイサービス)を国の保険制度から外し、市区町村が担う仕組みに転換したのだ。15年から各地で徐々に移行が進められ、昨年4月までに完了した。厚労省関係者の話。
「自治体には住民同士で支え合うボランティア組織やNPO法人を立ち上げてもらい、高齢者の安否確認やごみ出しの手伝い、高齢者が集いやすいサロンの運営などを担ってもらう。あるいは自治体に登録した介護業者には、入浴や排せつの補助のような専門的な介護をしてもらう仕組みです」
介護保険サービスをより重度の「要介護1〜5」に振り向けると同時に、要支援者向けのサービスは介護保険から外して保険料の抑制効果も期待してのことだった。ただ自治体からは「住民組織をゼロから立ち上げるのは容易ではない」「要支援者切りじゃないか」と反発も招いた。首都圏のある自治体の担当者が嘆く。
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source : 文藝春秋 2018年07月号