文在寅は金正恩の策略にまんまとはまった
2月9日の平昌(ピョンチャン)五輪開会式で掲げられるはずの、白地に青で朝鮮半島が描かれた統一旗。だが1月末現在、まだその成否は見通せていない。
統一旗を掲げての五輪における南北合同入場は過去、2000年シドニー、2004年アテネの両夏季五輪、2006年トリノ冬季五輪で実現した。いずれも金大中大統領(98〜03年)、盧武鉉大統領(03〜08年)という進歩系政権の時だ。シドニー五輪では、当時の金大中大統領が、北朝鮮に最大限の便宜を図るよう指示し、「支援した費用は500万ドルにも上った」という未確認情報も流れたほどだった。
だが、そうした動きがその後の南北関係にどれだけ寄与したかといえば、疑問符が付く。今回の統一旗に代表される文在寅政権の融和的動きも、北朝鮮を利するだけの結果に終わるのではないかという危惧がある。この間、南北間で何が行われ、双方のどのような思惑が絡み合ってきたのかを今一度検証したい。
1月17日、南北軍事境界線上にある板門店で開かれた南北次官級協議。この日、韓国と北朝鮮は平昌五輪開会式での合同入場や女子アイスホッケー合同チームの結成などで合意した。驚かされたのは、五輪前の北朝鮮・馬息嶺スキー場での合同練習も含め、すべてが韓国側の提案だったことだ。特に馬息嶺スキー場はスイス留学時代にスキーを楽しんだ金正恩朝鮮労働党委員長の発案で、2013年に日本海側の元山近郊に造られたもの。韓国の南北交流団体関係者は数年前に訪朝した際、北朝鮮側がしつこく馬息嶺スキー場の視察を勧めてきたと証言。「あわよくば、馬息嶺を使って五輪の南北共同開催を実現しようともくろんでいるようだった」と語る。
韓国の世論調査機関が1月18日に発表した資料によれば、統一旗を掲げた入場への支持は40.5%。韓国の国旗・太極旗を掲げるべき、との意見は49.4%に上った。
スポーツ界でも疑問の声が渦巻いた。合同練習は、五輪出場選手ではないにせよ、それに準じた国家代表級選手が参加するとされたのだが、スキーに詳しい人たちは一様にクビをかしげた。「一度も滑ったことがない場所での練習は、コンディションを崩しかねない」(関係者の一人)。アイスホッケー女子の合同チーム結成を巡っても、非難の声が上がった。元来のエントリー数は23人だが、国際オリンピック委員会の特別措置で北朝鮮選手12人を加えた35人となった。ただ、1試合ごとに北朝鮮選手3人が出場することになり、韓国選手の出場機会は奪われた。同種目の世界ランキングは韓国が22位、北朝鮮が25位。李洛淵首相が「女子アイスホッケーはメダル圏内にいない。北の実力のある選手が何人か加われば戦力が強化される」と語ると、世論は猛反発。選手の一人は韓国メディアに「選手たちは傷つき、士気も上がらない」と語り、大統領府ホームページには「(選手は)4年間苦労してきたのに、政治の論理で機会を奪うのか」「メダル圏にないから、犠牲になっても良いのか」などの書き込みが殺到した。
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source : 文藝春秋 2018年03月号