「仁義なき戦い」息切れしたほうが負ける
後藤 安倍晋三首相が9月28日に召集された臨時国会で衆議院を解散し、10月10日公示、10月22日投開票で衆議院総選挙が行われることになりました。安倍首相の最大の目的は選挙に勝って政権基盤を固め、来年9月の自民党総裁選で3選を果たし、宿願の改憲を果たすことだと見られます。民進党は山尾志桜里元政調会長のスキャンダル報道でつまずき、“小池新党”はまだできていない……。「今でしょ!」と解散を決めたのでしょうが、とんでもない大誤算が待っていました。
安倍首相が解散の意図を説明する会見をした9月25日に小池百合子都知事が「希望の党」の結党と代表就任を発表し、27日には急転直下、民進党の前原誠司代表が希望の党への合流を表明した。これによって一気に政権交代もありうる選挙になってしまいました。
人気はあるがカネがない小池新党と人気はないがカネと組織を持っている民進党が、安倍一強に対抗するために将来、連携するかもしれない、と私は予測していたのですが、これほど早くそして劇的に現実になるとは思っていませんでした。お二人はどうご覧になりましたか?
御厨 「政治家は豹変しても良いんだ」と昔から言われていますが、あそこまでとは……。安倍首相が豹変して、解散を打ち出したら、小池知事、前原代表までもが豹変した。安倍首相の一人芝居「大義なき解散」が、一夜のうちに安倍対小池の「仁義なき戦い」になってしまった。
片山 民進党は民主党時代から思想も政策もバラバラの寄合集団でした。しかし、かつては連合などと深い結びつきを持つ小沢一郎氏が強力なバインダーとなって党内を締め付けていたので、それなりに党としての体裁を保っていた。そんな小沢氏を2011年に追い出した時から民主党は崩壊過程に入ったと私は見ていました。いずれぐんと規模を小さくして、あるいは解党した上で、「政権交代」に代わる共通目標を掲げて、再出発しなければならないだろうとは思っていました。ところが、安倍首相の「大義なき解散」が時計の針を一気に回すことになった。
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source : 文藝春秋 2017年11月号