既存の技術を転用するだけで「敵基地反撃能力」は持てる
8月12日に放映されたNHKの番組「本土空襲」には驚愕させられた。第二次世界大戦でアメリカ軍が日本に行った空爆の全貌をデジタル・アーカイブスという新技術を駆使して表した。私の思いは、実は、その悲惨さだけではなかった。日本全国の機械や電気メーカーなど、いわゆる製造業の工場が片っ端から破壊されたことにあらためて衝撃を受けた。日本への執拗な空爆は、日本の製造業の「底力」にアメリカがいかに大きな脅威を感じていたかの証左でもあった。
それから72年。日本の製造業は完全に復活し、それどころか世界の最先端を疾走し続けている。
しかし、日本の製造業に、実はさらに秘められた「底力」があることに、北朝鮮クライシスを前にして、日本の安全保障政策に関与する一部の「自民党有志グループ」が気づいた。
北朝鮮の度重なる弾道ミサイルの発射を受け、地上型弾道ミサイル防衛システムであるイージス・アショアを政府に提言した自民党議員たちともリンクするその「自民党有志グループ」は、今、2つの緊急課題に取り組んでいる。
まず1つは、北朝鮮の弾道ミサイルの基地そのものを攻撃する「策源地攻撃」のための法整備と装備開発である。「策源地攻撃」は、「航空戦力」と「トマホーク対地攻撃巡航ミサイル(以後、『巡航ミサイル』と略)」――その2つの手段がある。
しかし「航空戦力」による攻撃は、爆撃機、護衛艦、給油機などのストライク・パッケージ編制が必要なところ、現在の航空自衛隊にはその能力はない。よって、「巡航ミサイル」の保有が、「自民党有志グループ」の間で弥が上にも注目されているのである。
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source : 文藝春秋 2017年11月号