★消費税増税の「実」
突然の衆院解散・総選挙に揺れる霞が関。安倍晋三首相は2019年10月に消費税を8%から10%へ引き上げる際、使途をかえて借金返済から教育費などに使いたいと表明した。一見すれば、「財務省敗北」と映るが、そうではない。二度にわたって消費税増税を延期された財務省が、今回は名より実をとった形なのである。
福田淳一事務次官(昭和57年、旧大蔵省入省)体制で最大の課題は、消費税増税の道筋をつけることだった。自民党総裁選は18年秋で、手を拱いていては消費税増税が争点になりかねない状況があった。そこで浮上してきたキーワードが「全世代型社会保障」である。主税畑の矢野康治官房長(60年)や岡本薫明(しげあき)主計局長(58年)らは、税率引き上げに向け、官邸からの球を打ち返す対応策を練っていた。
2012年当時の社会保障と税の一体改革の理念と「全世代型」は食い違う部分がある。だが「同じ理念、手法ではまた延期か凍結になる」との危機感が財政当局には強まっていたのだ。
今回の首相の方針で、一旦は、「教育」への支出が膨らむとしても、少子化が進めば、やがて教育関連の費用は減っていく。だから、税率引き上げの「枠」を確保し、10%の実績をつくるのが先決というのが財務省の考えである。しかも増収分のうち、借金返済にあてるはずの4兆円の一部を教育などにまわすため、既存の社会保障分の使い道に変更はない。
残る懸念は選挙の行方である。小池百合子都知事が立ち上げた新党「希望の党」は消費税増税の凍結を公約に掲げている。結果次第では増税は白紙になりかねない。消費税10%の答えは、10月22日に出ることになる。
★総選挙、医師会の魂胆
日本医師会も総選挙にフル稼働だ。この短期決戦が終われば、6年に1度の診療報酬と介護報酬の同時改定の折衝が本格化するからである。来年度予算に反映するため、12月20日ごろに決着するが、医師の報酬に切り込む姿勢を見せている財務省との衝突は避けられそうにない。そのため、自民党に恩を売れるチャンスを前に、医師会は本気で動くと見られている。
所管する厚労省は58年組を中心に診療報酬改定に臨む。鈴木俊彦保険局長(旧厚生省)は次官レースの先頭を走り、自民党や医療関連団体など省外の人脈も広い。樽見英樹官房長は、国会対策に定評があり、報酬改定の折衝を背後から支えることになる。鈴木、樽見両氏に加え、木下賢志年金局長、宮川晃雇用環境・均等局長(旧労働省)と実力派がそろう同期の競争は熱気を帯びている。それだけに、今回の改定は、次の次官を占う試金石のひとつと見られている。
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source : 文藝春秋 2017年11月号