★自公大勝が裏目に
衆院選で消費税増税凍結を掲げた希望の党が惨敗し、消費税の使途変更を訴えた現政権が勝利したことで、財務省が安堵しているかと思えば、実際には痛し痒しの情勢だ。与党で3分の2を超え、保守勢力全体では8割に達したため、安倍晋三首相が憲法改正へ突き進めば、立ち消えになりかねないからである。
選挙が終わって最初の3日間、福田淳一事務次官(昭和57年、旧大蔵省入省)や岡本薫明(しげあき)主計局長(58年)ら財務省の主要幹部が、官邸の首相執務室に入ることはなかった。外交日程が立て込んでいるとはいえ、選挙公約に消費税増税を盛り込んでいたにしては、異例ともいえる事態だ。
財務省人事は順当に行けば来年は岡本氏が、2019年には岡本氏と同期の太田充理財局長が次官に就くとみられる。19年10月に消費税を10%にするには遅くとも半年前、できれば1年前には決定する必要がある。いずれの時期も「岡本次官」が対応することになるが、1年前なら18年10月で、ちょうど自民党総裁選直後の時期にあたる。
安倍首相が3選し、実際に憲法改正を発議するとすれば、自公与党体制だけでなく希望の党、日本維新の会の賛同を得るのが望ましい。つまり、消費税増税に否定的な勢力を引き込むために、改憲への協力とバーターで消費税増税を凍結する可能性は「十分あり得る」というのが、ある財務官僚の見立てだ。
首相はかつて「任期中に二度も消費税をあげた首相はいない」と漏らしたこともあり、財務省には決して親近感を抱いていない。超長期政権、国会で3分の2を占める勢力でも消費税10%にできなければ、機会は未来永劫失われる。財務省は息をのんで官邸の意向を見守っている。
★厄介なインフラ3人衆
総選挙を終え、安倍首相は、日米首脳会談、アジア太平洋経済協力会議(APEC)などを通じ、官民一体のインフラ輸出をさらに加速する姿勢を示している。
政府側の取りまとめ役になっているのは、加計問題のキーパーソンのひとりである和泉洋人首相補佐官(51年、旧建設省)。関係省庁や民間企業を巻き込んで電力施設、鉄道、港湾事業などの受注に動く。企業に対し「提示価格が高すぎる。これでは中国勢に勝てない」とすごみを利かすこともあるという。
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source : 文藝春秋 2017年12月号