★租特「一挙両得」の謀
安倍内閣が打ち出した、賃上げが不足した大企業には税優遇を停止する措置。これは実は、アベノミクス再起動と選挙対策の「一挙両得」を狙った税制措置である。
企業が支払う税を優遇する租税特別措置は「租特(そとく)」と呼ばれ、中でも大企業が有効活用しているのが、技術や製品の開発で費用が増加した場合に法人税を軽減する「研究開発税制」だ。政府関係者は「特にトヨタなどの製造業が恩恵をこうむっている」と指摘する。つまり、この措置はトヨタなどに3%の賃上げを迫るための「道具」でもある。
租特は自民党税制調査会、財務省の力が強い税制改正において、例外的に旧通産省時代から経産省が主導してきた分野だ。現在、安倍官邸の主要官僚は今井尚哉(たかや)首相秘書官(昭和57年、旧通産省入省)と、前経産次官の菅原郁郎内閣官房参与(56年)。一方、彼らの古巣である経産省トップの嶋田隆次官は、同期の今井氏と気脈を通じる。この布陣で、安倍政権ができて6回目の年末に、経産省が前面に出た。
また、安倍自民一強の中で、例外的なのが愛知県である。製造業が多く、労働組合の力が強いため、自民圧勝は実現できていない。これに官邸首脳は苛立ちを隠せないでおり、税制面で経産省に切り込ませて、「選挙対策」も実施する格好だ。
租特削減は財務省主税局にとっても悲願である。これまで国会議員と経産省に押し切られてきた数少ない分野だが、部分的とはいえ経産省・官邸組が削減に動くことは利害が一致する。福田淳一財務次官(57年、旧大蔵省)らは静観しつつ、着地点を見守る構えだ。
★跋扈する真性リフレ派
黒田東彦(はるひこ)日銀総裁(42年、旧大蔵省)が、2018年4月に任期を終える。麻生太郎財務相らが続投を支持しているが、総裁人事は安倍晋三首相の腹ひとつで決まる。
総裁への意欲を示しているのが、首相のブレーンを自任する駐スイス大使の本田悦朗氏(53年)だ。ただ、大蔵官僚としては四国財務局長、官房審議官止まりで、「かつて大物次官のポストだった日銀総裁の座に就くにはあまりに軽量」(財界長老)との見方は強い。しかも、本田氏が首相に接近したのは、たまたま別荘が近所だったから。「総裁に指名したらお友だち人事の極み」(官邸筋)と否定的な観測も飛び交う。
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source : 文藝春秋 2018年01月号