阪急や日本ハムなどの監督を務めた上田利治(うえだとしはる)は、研究熱心と一本気な性格で選手たちを優勝争いに導いた。
1978(昭和53)年、阪急が1点を追う展開となった日本シリーズ第7戦。上田はホームランと判定されたヤクルト大杉勝男の打球が「レフト・ポールの外に出ていた」と激しく抗議して、1時間19分も試合が中断した。
37年、徳島県に生まれる。実家は魚屋だった。海南高校時代から捕手として活躍。弁護士を目指して関西大学法学部に入るが、村山実とバッテリーを組み関西六大学リーグで4回優勝。全日本大学野球選手権でも関西の大学として初の優勝を勝ち取った。
広島に入団したが、体調を崩して3年で現役引退。25歳で二軍コーチとなる。解説者をへて、71年、西本幸雄監督率いる阪急にヘッドコーチとして迎えられ、74年には37歳の若さで監督に就任した。
以降、オリックスの時代を含めて15年間監督をつとめ、リーグ優勝5回、日本シリーズでは75年から77年まで3年連続優勝を果たした。
78年の日本シリーズ最終戦では、長時間の抗議にもかかわらず敗退。責任をとるかたちで監督を辞任したが、3年後には球団の強い要請で復帰した。95(平成7)年からは日本ハムで5年間監督を務めている。
過去のデータはもとより、アメリカの野球理論まで読んで研究し、選手の管理には気を配った。好プレーをすると「ええで」と褒め、練習中にも調子がいいと「ええで」と喜ぶので、「ええで」の回数で上田のチームの成績が予測できるといわれた。
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source : 文藝春秋 2017年09月号