犬養道子、倉嶋厚、上原康助、阿部進、ジャンヌ・モロー

蓋棺録

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 作家で評論家の犬養道子(いぬかいみちこ)は、戦後早くから欧米を歩きまわって体験記を発表し、聖書研究と難民支援を続けた。

 1932(昭和7)年5月15日の夕方、親戚の家で遊んでいたとき、祖父の犬養毅が官邸で海軍将校などに襲われたとの報が入る。駆けつけたとき「お祖父ちゃま」は、「9発撃ったのに3発しか当たっていない」などと冗談を言うほど意識ははっきりしていたが、深夜11時過ぎに息を引き取った。

 21年、東京に生まれる。父は犬養毅の三男・健。母は男爵長与称吉の娘。名家の「お嬢様」として育てられる。利発な少女だったので、祖父の犬養毅は「道公」と呼んで特にかわいがった。

 11歳のときに、その祖父が暗殺される「五・一五事件」に直面して衝撃を受け、この出来事と自分の人生の意味を常に自問するようになったという。カトリックの洗礼を受けたのは戦時中だった。

 女子学習院から津田英学塾(現・津田塾大学)をへて、47年からアメリカに遊学するが、結核と診断されサナトリウムに収容される。ところが、静養しながら、廃棄されていたパラシュートの紐を編んでバンドをつくることを思いつき、大金を手にいれてしまう。

 ヨーロッパに渡ってからも、フランスで聖書学を学びながら、古城を借りて留学生たちの交流の場をつくるなど、常に前向きに行動した。57年に帰国して、足掛け10年にわたる欧米での体験を『お嬢さん放浪記』として発表すると、たちまち人気作家となる。

「日本に帰って来て、こんどはエジプトの奥地にワニ狩りにゆくのだなどと言うと、誰も彼も笑って相手になってくれない」

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source : 文藝春秋 2017年10月号

genre : エンタメ 芸能