老人ホームは恋の宝庫である

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9年ぶりの連ドラで描いた楽しく、幸せな「終活」

倉本聰氏 ©文藝春秋

 長年、脚本家をやっていると、書いていて楽しい作品と辛い作品があります。今回はとても楽しかった。物語が湿っていないからです。

 人間には、「陰」と「陽」の2種類があります。王貞治が「陰」なら長嶋茂雄は「陽」。高倉健が「陰」なら石原裕次郎は「陽」。僕は普段、ドラマを作る時は陰陽2つのタイプの俳優を組み合わせてキャスティングするのですが、なぜか、今回は「陽」の人間ばかりが集まってしまった。結局、人間、齢を重ねると「陽」のタイプが生き残るのかもしれません。

 一度だけ撮影現場に行ったところ、明るい雰囲気でつい笑ってしまいました。皆、トシだから長い台詞が覚えられない。ミッキー・カーチスは、「俺は(台本で)3行以上は無理だから。三行革命なんつって」と言ってカンニングペーパーを貼りまくるし、五月みどりは「私全然覚えられないの」って、泣き付いてくるし。もう僕は現場には行きません。だって、撮影を見ていると何かと文句を言いたくなってしまいますから(笑)。

 4月3日スタートのドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)。毎週月曜日〜金曜日、午後12時30分〜12時50分という時間帯で放映中だ。倉本聰氏(82)にとっては9年ぶりの連続ドラマとなる。
 物語の舞台は老人ホーム「やすらぎの郷 La Strada」。映画・テレビ業界を支えた俳優・脚本家・音楽家などの“業界人”しか入居出来ない施設である。厳正な入居資格を満たした老人たちがここに集い、穏やかな人生の終末期を過ごしている。
 入居者を演じるのは往年の名優たち。主人公の脚本家・菊村栄を演じる石坂浩二(75)と、大女優・白川冴子に扮する浅丘ルリ子(76)は、2000年の離婚後初共演。脇を固めるのもスターばかりだ。有馬稲子(85)、加賀まりこ(73)、五月みどり(77)、野際陽子(81)、藤竜也(75)、ミッキー・カーチス(78)、八千草薫(86)、山本圭(76)……。
 ドラマのテーマは「高齢化社会」、そして「生と死」。倉本氏が作品を通して伝えたいこととは――。

大人のための“シルバータイム”を

 書こうと思ったキッカケは、僕の同年輩の友人たちが漏らした「見るテレビ番組がない」という言葉でした。

 若い頃にどれだけ無理をした人でも、老いると朝5時頃に目が覚めて夜は早く眠るようになります。これはヒトという生き物の本来の生態です。日の出に合わせて起床し、日の入に合わせて就寝する。現代人はどんどん夜に進出していますが、老人になると体内リズムは自然と原点回帰していくわけです。

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source : 文藝春秋 2017年05月号

genre : エンタメ 芸能 テレビ・ラジオ