私は、アメリカが「自分探し」をはじめたと見ています。日本人も戦後ずいぶん「自分探し」をしましたが、アメリカもついにそういう時代が来たかと思うと感慨深いものを感じます。アメリカ国民の心情を推し量れば、
「この国にはまだ力があるはずだ。だから、自分たちに本当に何ができるか見つけなくてはいけない」
というところではないか。トランプ大統領は、選挙戦でこうした国民心理をうまくすくい取りました。
しかし自分探しと言っても、「何を」「どこまで」やるのかという具体的な目標値は、トランプ大統領にもアメリカ国民にも、きっと見えていません。
トランプ大統領を支持する人々は中高年が主体で、おそらくアメリカが20世紀で一番輝いていた1950年代から60年代、アイゼンハワーからケネディにかけての時代へのノスタルジー一杯の世代と思われます。トランプ大統領が、第二次産業を中心に雇用を増大する発言を繰り返しているのは、「あの時代をもう一度」とねがう彼らへのアピールもあるのです。
でも、いまのアメリカは50年前とちがって人種も宗教も格段に多様化しています。「アメリカとは何ぞや」という議論を始めたら、延々と続いて終わらないかもしれません。
トランプ大統領は、89年まで大統領を務めたレーガンに似ていると言われますが、あのときのアメリカには、少なくとも他人から借金をして苦境をしのごうというストラテジーはありました(笑)。1国単位の経済運営ではやっていけなくなった現実に直面し、ドルをフロート市場にして、政府の責任を小さくする方向へ舵を切ったのです。製造業から金融に重点を移し、そして1国単位の経済からグローバル経済へ国の経済体制を変えました。
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source : 文藝春秋 2017年04月号