★パンドラの箱
前局長の天下り問題で前川喜平事務次官(昭和54年、旧文部省入省)が更迭された文部科学省には、ぴりぴりした雰囲気が漂っている。
早稲田大は在野の雄だが、栗山尚一(たかかず)元駐米大使(29年、外務省)、津田廣喜元財務事務次官(47年、旧大蔵省)といった大物官僚を迎えてきた。文科省の高等教育局長だった吉田大輔氏(54年、旧文部省)が天下りした時も、不審に思う人は少なかったはずだ。
だが人事課長、事務次官らが報告を受けていたことや、文科省側から要求した人事だったことが分かると、「どの役所も、天下りあっせんで攻撃されたら終わりだと分かっているはずなのに」(元外務省局長)と驚きが広がった。将来の次官候補だった元人事課長の藤原章夫氏(62年、旧文部省)が停職、現職の豊岡宏規人事課長(平成元年)は減給の処分を受けた。
多くの官庁は企業や営利団体を相手にしているだけに、天下りのあっせんには慎重だ。人事課職員が直接タッチしたり、OBがネットワークを作ったりしていた文科省のような「大胆かつ無神経なやり方はあまりないだろう」(内閣官房幹部)とみられる。
前川次官の後任には、旧科学技術庁出身の戸谷一夫氏(昭和55年)が就いた。戸谷氏が1年半務めた後は、小松親次郎文科審議官(56年、旧文部省)に引き継ぎ、旧科技庁出身者を挟んで藤原誠初等中等教育局長(57年、旧文部省)につなぐのが順当な路線。だが、文科省の調査は当面続く。小松氏は人事課長を、藤原氏は官房長を務めたことがあり、天下り問題に巻き込まれないとも限らない。
政府の調査は、これからすべての省庁を対象に実施される。霞が関には「ぬるま湯役所の不手際で、パンドラの箱をまた開けるのか」(事業官庁の人事担当者)と、不安やいら立ちが広がっている。
★市場検察の行く末は
「共謀罪」が「テロ等準備罪」と名前を変えて審議されることで、通常国会で法務省が久しぶりにスポットライトを浴びている。事務次官として本格的に始動する黒川弘務氏(58年、検事任官)も意気軒高である。かつては共謀罪を盛り込んだ組織犯罪処罰法の改正に三度も失敗し、「官邸から、いわばA級戦犯と指弾された」(元法相)が、今回は事情が違うようだ。
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source : 文藝春秋 2017年03月号