★税制改正をめぐって
安倍晋三首相の下で進む首相官邸一強体制は、税の世界も変えた。
第一のポイントは、配偶者控除の廃止だ。主税畑から久しぶりに事務方トップに立った佐藤慎一事務次官(昭和55年、旧大蔵省入省)は、所得税改革の第1弾として、構想だけで手つかずだったこの問題に着手。自民党の宮沢洋一税調会長(49年)と、茂木敏充政調会長を相方に選んだ。
だが、専業主婦世帯の優遇税制廃止は、事実上の増税となる。まず反発したのは東京都議選を控える公明党、そして菅義偉官房長官だった。結局、配偶者控除は緩和にとどまった。佐藤氏と星野次彦主税局長(58年)にとって、手痛い敗北となった。
第二は、積み立て型の少額投資非課税制度(NISA)の非課税期間だ。佐藤、星野両氏が主張した「10年」は通らず、森信親長官(55年)を先頭とする金融庁の「20年」で決着した。森氏は、旧大蔵省では証券局、銀行局、国際金融局などの「傍流」を歩み、2006年に金融庁へ転じた。かつての力関係なら、とても勝負にならない組み合わせだ。
だが、森氏の背後には菅長官がいた。森氏の前々任者である畑中龍太郎駐コロンビア大使(51年)は、3年間にわたって長官ポストを務めた実力者ながら、最後は官邸の不興を買った。森氏はこの轍を踏まぬよう、官邸に接近していた。
かくて35年ぶりに誕生した主税局長からの次官も、何も勝ち取れぬまま税制改正は終わった。2017年は本流の福田淳一主計局長(57年)が次官に昇格する見通しだが、果たして1年後の風景は――。
★対露経済協力案の裏で
経済産業省で次官レースのトップランナーとして名前が挙がる、片瀬裕文経済産業審議官(57年、旧通産省)への風当たりが強まっている。
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source : 文藝春秋 2017年02月号