トランプ政権への対処、「内弁慶」の事務次官、“政治派”重用の時代、現場はうんざり

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★トランプ政権への対処

 米大統領選で共和党のドナルド・トランプ候補が当選し、安倍晋三首相が世界で一番早く、電撃的にニューヨークで会談にこぎつけた。巷間、外務省はヒラリー・クリントン候補の勝利だけを念頭においていたため、首相官邸が叱責したとの説が流布しているが、実情は少々異なる。

 佐々江賢一郎駐米大使(昭和49年、外務省入省)ら大使館チームは共和党大会前後から「トランプ当選もあり得る」とみて、国家安全保障担当補佐官に内定したマイケル・フリン氏らと接触を続けていた。途中からはトランプ氏の長女、イバンカ氏が親日家であることから、同氏の夫、ジャレッド・クシュナー氏とも非公式に接近した。

 佐々江チームでは岡野正敬駐米公使(62年)が尽力し、11月8日の大統領選当日の数日前には、「トランプ氏が勝利すれば、間をおかずに電話で会談する」との確約を得ていた。

 そして電話会談があり、安倍がトランプと会談したい意向を伝えると、最終的な場所と時間の調整を担ったのも佐々江、岡野両氏ら大使館チームとクシュナー氏だった。その接触で、11月17日に「ニューヨークのトランプタワーで」と会談場所、時間が決まったのだった。

 国内では外交面でも今井尚哉(たかや)首相秘書官(57年、旧通産省)の影響力が強く、外務省はかすみがちだが、駐米大使館は今回の大統領選で存在感を発揮した。佐々江氏はすでに大使在任が4年以上の長期に及んでおり、2017年9月で丸5年となる。後任には杉山晋輔外務事務次官(52年、外務省)が取りざたされる。何が飛び出すか分からないトランプ政権への対処が少なくとも今後4年間、駐米大使館の正念場となる。

★「内弁慶」の事務次官

 全国農業協同組合連合会(JA全農)の改革は、規制改革推進会議による思い切った提案を、自民党農林族が押し返す形で決着した。族議員の有力者は「とがったところを丸くした。まずまずだ」と満足そう。安倍首相や菅義偉官房長官は、民主党政権にすり寄ったJAグループに冷たくしてきたが、農林族とJA側が一矢報いた格好だ。

 規制改革会議の金丸恭文議長代理は、有力な経営者として知られ、首相や官房長官とも親しい。自民党の小泉進次郎農林部会長が改革の表舞台に立っていたこともあり、「官邸は改革会議案で押し切るつもりではないか」(ベテラン議員)と疑心暗鬼が農林族議員の間で広がった。

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source : 文藝春秋 2017年01月号

genre : ニュース 政治