★新日米外交のキーマン
トランプ米大統領と安倍晋三首相の日米首脳会談は成功裏に終わり、佐々江賢一郎駐米大使(昭和49年、外務省入省)率いるワシントンの米国大使館も面目を保った。今井尚哉(たかや)首相秘書官(57年、旧通産省)を中心とする経産省主導の官邸外交ばかりが目をひくが、外務省による伝統的な事務方の力も地味ながら際立つ。
とりわけ、当初は官邸側が日米の重要なパイプと目したフリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)がロシアをめぐる情報流出スキャンダルで辞任し、菅義偉官房長官らのあては外れた。もともとフリン前補佐官は階級がすべてである軍人の世界では三ツ星の将軍で、四ツ星のマティス国防長官とは序列において雲泥の差があった。
今後、日米のパイプはマティス長官を軸とするミリタリー外交と、佐々江大使が築いたトランプ大統領の女婿であるジャレッド・クシュナー上級顧問の2つが主なものとなる。佐々江大使は、少なくとも来年までの続投が濃厚だ。
外務省本省では安倍首相、菅長官の信任が厚い秋葉剛男外務審議官(57年、外務省)の対米外交での存在感も目立つ。秋葉氏は杉山晋輔事務次官(52年)の後任次官が確実視されており、太平洋を跨いで佐々江―秋葉ラインが要となる。
もうひとり、国際法局条約課の高尾直(すなお)首席事務官(平成15年)の存在も見逃せない。高尾氏は駐米大使館、北東アジア課など中枢の部署を経験し、第二次安倍内閣の発足後から一貫して安倍首相の通訳官を務めている。今回のトランプ大統領との2日間にわたる会談でも、ゴルフ場を含めて終始一貫、首相と行動を共にした。事前の準備から会談後の記録作成まで、事務処理能力が高く評価されているだけでなく、首相からの個人的な信頼も深い。
佐々江氏から高尾氏の間の入省年次の違いは29年。幅広い世代の4人が、トランプ政権との新日米外交を支えるキーマンとなる。
★東京五輪に向けて
警察庁の夏の人事異動が注目されている。坂口正芳長官(昭和55年、警察庁)が勇退して栗生(くりゅう)俊一次長(56年)が昇格するのは既定路線だが、問題は庁内に「反栗生勢力」が根強いことである。
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source : 文藝春秋 2017年04月号