――11月8日のアメリカ大統領選挙では、事前の大方の予想を覆し、共和党のドナルド・トランプ候補が勝利を収めました。成功した実業家ではあっても、政治経験の一切ない人物が世界一の大国のリーダーとなり、世界中に「トランプショック」を与えています。福田さんは今の状況をどうご覧になっていますか。
福田 大統領選が始まった当初は、トランプ氏が共和党の候補者になるかということ自体が疑問視されていました。ところが、有力と思われていた人たちが次々と辞退し、7月の共和党大会で彼が正式に共和党候補に指名された。それ以降、今度は圧倒的な差で民主党のヒラリー・クリントン候補が勝つのではないかという見通しが随分強かったですね。でも結果はこうなったわけです。ですから、まだ正式にトランプ政権が発足する前の現段階(11月下旬)で、軽々に具体的なお話をするようなことはできません。
ただ、トランプ氏が次期大統領に決まってからの報道等を見ていますと、割合現実的な考え方をされるのではないかという期待は強まってきているように感じます。もしも選挙中に言っていた通りにやるのであれば、それは今までの世界の考え方、枠組みに対する大変化につながります。果たしてそこまでやるのかどうか、あまり予断を持たずに、よく推移を見たほうがいいように思いますね。
民主主義とメディアへの問い
――トランプ大統領が誕生した背景を考えてみますと、すでに、米国内の分断、格差の問題、白人労働者層の反乱、移民問題、反グローバリズム、内向きの孤立主義……などなど様々な論評が行われています。何が最も大きな要因と見ていますか。
福田 まず大きく言えば、ある意味で「民主主義そのもの」が問われているように思います。民主主義は、今まで世界中で行われてきたあらゆる政治形態の中でベストではないがベターとされてきましたが、果たして本当にそうなのか、という問いが突きつけられた思いがします。
そしてもう1点。この選挙結果はメディアに対して大きな問いを突きつけているのではないでしょうか。これまで国民は、新聞やテレビなどの媒体を通じて情報を得てきた。しかし今やインターネットを通じた選挙戦が相当広まっている。個々人がインターネット、ツイッターやその他のソーシャルメディアを通じて直接情報を仕入れ、多様な価値観を持って判断するようになりつつあった流れが、極大化した結果ではないでしょうか。
――確かにトランプ氏は、アメリカの大手有力メディア59社のうち57社がクリントン支持の中、選挙戦でツイッターを多用しました。
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source : 文藝春秋 2017年01月号