私は安楽死で逝きたい

夫との死別から27年、91歳脚本家の問題提起

橋田 壽賀子 脚本家
ライフ 社会 医療

 日本も安楽死を認める法律を早く整備すべきです

 1年半前に90歳をむかえたのを境に仕事から遠ざかっていたのに、この夏は、また1本「渡る世間は鬼ばかり」を書いてしまいました。去年から頼まれていた仕事でしたから本当は6月に書き上げなければいけなかったのですが、ちょっとナメてのんびりしていたら、9月放送と聞いて慌てて書きました。

 私のドラマはロケーションがなくセットだけで収録されます。ですから遅れるとセット代がかかって大変。中身はないけれど、〆切だけは守るっていうのが私の仕事の信条ですから、7月のひと月で4時間のドラマを書き上げました。書き出したら何でもないんです。「鬼」は老若男女の登場人物がいて、どの年代もそれぞれ問題を抱えていますから、けっこうネタには困らない。あまり苦労することなくちょろちょろっと書いてしまいました(笑)。

 この机で書けばなんとか書きあがるという変な自信があるんですね。結婚前に買った食堂用のテーブルで、東京からここ熱海に持ってきました。塗り直したらちょっとゲスな色になってしまって、いまはこうやってクロスをかけていますけれど、「おしん」も「おんな太閤記」もみんなこの机で書きました。私にとって守り神みたいなものなんですよ。

 あしたは2017年版の「鬼」の打ち合わせということでテレビ局の方が訪ねて来ます。登場人物が成長していくから、次も見たいとテレビ局に投書が来るそうです。えなり(かずき)もあんなに小さかったのに、いまは嫁姑問題。ワンシリーズで終わればよかったんですけれど、同時進行しているからいつまでも続く。来年も生きていれば書くかもしれません。もう本当にお金を稼いでもしようがないんですけれどね(笑)。

スマホで安楽死について調べてみた

 それで、その「鬼」を見た人からいろいろな連絡があって、また考えさせられました。

 電話をくれたのは同世代の親戚。私の新作をひさしぶりに見たのを喜んで連絡してきた。「元気でよかったね」というので私もふつうに話していたんですけれど、むこうは「元気でよかったね。よかったね」ばかり言う。ちょっとおかしいなと思ったら、子供に代わって「すみません、ちょっともうキテいます」と。「ドラマを見て電話をかけたいというので電話をさせました。忙しいのにすみません」と言う。

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source : 文藝春秋 2016年12月号

genre : ライフ 社会 医療