独裁者が世界を徘徊している

トランプ、習近平、プーチン……甦るヒトラーの亡霊

保阪 正康 昭和史研究家
佐藤 優 作家・元外務省主任分析官
片山 杜秀 慶應義塾大学教授
ニュース 政治 国際

大恐慌、災害、隣国の脅威――非常事態に彼らは静かに忍び寄る

トランプ氏 ©時事通信社

 保阪 昨今の世界情勢を見ますと、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席など「独裁者」のような強権的政治家が目立ちます。またアメリカではドナルド・トランプ候補が、人気を集めている。「独裁者」が世界の命運を握る時代が、また来るのではないかと危惧しているところです。

 佐藤 非常に重要な問題提起です。独裁者とは一体何者なのか、そしてどういった背景で登場するのかをきちんと分析することは、今日、大きな意義があります。

 保阪 加えて注視しているのは、空前ともいっていい、“ヒトラー書ブーム”です。この数年、欧米や日本でも関連本が、小説や研究書を問わず次々と刊行されている。独裁者が現われることへの危機感から、このような書籍が多く刊行されているのだろうか、それとも……。

 片山 ヒトラーへの関心は、明らかに高まっています。この『文藝春秋』の鼎談書評でも、ヒトラーを題材にした書籍を何冊も取り上げてきました。今年、映画も公開される小説『帰ってきたヒトラー』(ティムール・ヴェルメシュ著)は、現代のドイツにヒトラー本人がよみがえる、という荒唐無稽なストーリーで、本国では200万部を売り上げる大ベストセラーになりました。復活したヒトラーはそっくりさん芸人として人気者になります。しかし、そこはヒトラー。現代のドイツにも1920〜30年と似たような社会問題が存在していることを見抜き、かつてと同じような演説で人々を魅了する。現代でもヒトラー的なものが共感を生む姿を巧みに描いている。

 佐藤 ドイツでは昨年、ヒトラーの著作権が切れて、それまで版権を持っていたバイエルン州にある、現代史研究所が『我が闘争』を刊行しました。現物を取り寄せて驚いたのは、その大きさで、大辞典2冊分くらいのサイズがあります。

 片山 日本では文庫2冊に収められていますよね。

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source : 文藝春秋 2016年06月号

genre : ニュース 政治 国際