国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです。
【れ】「霊感商法」について認識が不足だったと反省
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連施設を訪問したことで追及を受けた自民党の萩生田政調会長が、〈昭和の時代の関連商法のことなどは承知をしておりましたが……〉とコメントしました(8月18日)。その後の教会の事情には詳しくない、という弁明です。
ニュースを聞いて、私は妙なところに注意が向きました。「関連商法」というのは意味が通らない。「霊感商法」の間違いじゃないか。音声を聞き直してみると、「かんれい商法」とも聞こえます。つい言い間違えるほど、ご本人の問題意識は希薄だったのではないか。
などと言いつつ、私自身も、霊感商法による被害が今も続いているということは、一連の報道で初めて認識しました。用語は知っていたけれど、実態にはあまり関心を持たなかった。辞書の仕事をする人間として反省しています。
霊感商法が初めて社会問題化したのは1987年のことです。オウム事件のあった95年頃にも話題に上りました。ところが、主な国語辞典に「霊感商法」が載るのは遅れます。2006年に『大辞林』が項目を立て、『広辞苑』『大辞泉』が後に続きました。私の携わる『三省堂国語辞典』(三国(さんこく))は、今回の第8版(2022年)でやっと「霊感」の項目に「―商法」と例示しました。
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source : 文藝春秋 2022年10月号